めいさんも夫も母子家庭で育ったのだが、共通するのは、安定した家庭を築いている「お手本」のような人が周りにいなかったということだ。めいさんは夜遊びや家出を繰り返し、一時期、更生施設に入れられていたが、中学を卒業してすぐに水商売を始めた。再婚したのは、1人で子どもたちを養う経済力がなかったこともあるが、「父親がいない」という自分の出自に負い目を感じていたからだという。
狭いコミュニティで出産と結婚を繰り返す構造
沖縄県の一部の地域では、幼少期から10代にかけて過ごしたコミュニティが大人になっても大きな影響力をもつ。美佳さんに暴力をふるっていた彼氏はもともと同じコミュニティの仲間だったが、子どもが生まれた途端、美佳さんはコミュニティから排除されてしまった。相談に乗ってくれる友人や大人が周りにおらず、かといって”友だちの友だち”程度の知り合いが数多くいる狭い地域なので、どこかのコミュニティに属していないと生きづらいという問題がある。
美佳さん、まりさん、めいさんは、そうしたコミュニティの中で出産、結婚、そして離婚を繰り返している典型的なケースだ。正規雇用の仕事がそもそも少ない中で自分は自立できるのか、子どもを育てられるのか。相談するパートナーがいないことも、大きな不安となってのしかかる。さまざまなプレッシャーに押しつぶされそうになりながら生きている。そして、経済的、精神的に少しでも楽になりたいという思いから仲間内で再婚するのだ。
国がいかに沖縄の貧困の状況を理解していないかは、河野氏の発言を見ても明らかだ。甘えてはいけないと突き放していたら彼女たちは行政を頼れず、貧困のスパイラルから抜け出せないままなのではないだろうか。