収入の多寡と幸福度にはいかにも相関関係がありそうだ。しかし平均年収320万円で国内最下位の沖縄県の幸福度は日本一高い。慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は「物事を楽観的に考えられる人は幸福を感じやすい。『なんくるないさー』という方言があるように、沖縄の特有の気質が影響しているのではないか」という——。
※本稿は、前野隆司『年収が増えるほど、幸せになれますか? お金と幸せの話』(河出書房新社)の一部を再編集したのものです。
年収が低いのに、なぜ沖縄県民は幸せなのか
幸福度は地域によっても異なります。では、「日本で一番幸せな都道府県」はどこだと思いますか? 私は以前、博報堂とともに「地域しあわせ風土調査」という大規模調査をおこなったことがあります。都道府県ごとの幸福度を測定し、高い順にランキング化してみたのです。
結果はご覧の通りです。ベストスリーは沖縄県、鹿児島県、熊本県。九州・沖縄地方の幸福度が高いことが判明しました。しかし、沖縄県の平均年収は320万円と、全国で最下位です。失業率も5パーセント近くと、やはり全国ワーストです。
なのに、「日本一幸せ」な沖縄県。この事実からも、必ずしも年収と幸せは比例しないといえそうです。年収が低く、失業率が高いにもかかわらず、なぜ沖縄県は「日本一幸せ」なのでしょうか。要因の一つとして挙げられるのは、「なんくるないさー」精神です。
「なんくるないさー」は沖縄の方言で、「なんとかなるさ」という意味。きわめて楽観的な県民性があるのです。多くの幸福学研究によって、楽観的な人、ものごとをポジティブにとらえることができる人ほど、幸福を感じやすいことが知られています。
私の研究でも、「なんとかなる」と思う人は幸福度が高いという結果が出ています。逆に、悲観的でネガティブな人ほど、幸福を感じにくい傾向があります。