年11万ドルでレストラン出店契約が成立
ひょっとしたら社長も、契約を断ったことを後悔していたのかもしれない。理由がどうであれ、2度目の面談は、30分前と打って変わった雰囲気で進んだ。部屋の空気も明るくなり、社長もウッドの熱い語りを聞き流すだけでなく、いろいろと質問をしてきた。そしてついに、ウッドとシューマッハは、メインストリートに年11万ドルでレストランを出店するという、スウィフト社とのテナント契約にこぎつけたのである。
その結果が、「ここだけで食べられるスウィフトの高品質ミート」を売り物としたレッド・ワゴン・インだ。スウィフト社が出店料を支払うとはいえ、レストランはディズニーの基準を満たしていなければならない。
ディズニーランドと賃借契約を結ぶ企業に対し、契約書は次のように定めていた。「内装の建築図面はすべて、賃借人の選定により、正当な資格を有する建築家あるいは認可を受けた内装事務所によって作成されなければならない。賃借人指定の建築家が作成する、ディズニーランド内の建物あるいは内装構造の設計図は、WEDエンタープライズが規定するテーマおよび総合計画に則ったものとする。契約締結後、速やかに、ディズニーランド株式会社は基本計画図を3部提出し、改定に備えて2部はディズニーランドが、1部は賃借人の建築家が保管すること」
レッド・ワゴン・インはスウィフト社の広告文でこう紹介されている。「過ぎ去った時代の優美な輝きに包まれ、かつての名だたるレストランを彷彿とさせます。店内の調度品はすべて、陽気な魅力にあふれる1890年代の記憶を見事に再現しています。ステンドグラスの天井に、西部随一の歴史的邸宅として知られるロサンゼルスのセント・ジェームズ邸から移築した玄関ホールとロビー。雰囲気を演出しているのは建物だけではありません。ステーキやチョップなどのメニューが、古き良き食事の風景を呼び覚ましてくれます」