“成果”を上げた自治体を目の敵にした総務省
もともとこの制度に乗り気でなかった総務省は、2018年に過度な返礼品競争はけしからんとして、制度の見直しを実施。返礼品を地元産品に限定し、寄付額に対する返礼品の金額に30%という制限を設けた。その上で指導に従わなかった大阪府泉佐野市など4自治体を新制度から除外する強硬措置に出た。泉佐野市はアマゾンギフト券などを返礼品に人気を集め、497億円もの寄付を集めていた。除外措置が不当だとして泉佐野市は訴訟を起こし、最高裁で勝訴。新制度に復帰するというすったもんだを演じた。
総務省が「ふるさと納税」で“成果”を上げた自治体を目の敵にしたのは、地方交付税交付金制度に風穴を開けかねないと感じたからだ。地方交付税交付金は、国が地方自治体の財政力に応じて分配支給するもので、その分配権限は総務省が握っている。自治体の生殺与奪の権限を総務省が握っていると言っても過言ではない。言うことを聞かない泉佐野市の交付税を大幅に減額したのが端的な例だ。
「返礼品のない寄付」をする人が増えている
せっかく平等に税金を配ろうとしているのに、ふるさと納税で大きな収入を稼ぐところが出てきては制度の根幹に関わる、というのが総務省の正直なところだ。実際、地域の住民税収よりふるさと納税の収入の方が多い自治体がいくつも誕生している。
だが、制度の見直しでふるさと納税人気が鎮静化すると見た総務省の思惑は外れる。2020年度に再び「ふるさと納税額」が大きく増えたからだ。「返礼品競争ばかりが強調されますが、災害復旧などで、返礼品のない純粋な寄付も増えています」とNPOの責任者は語る。本当の意味で地域を応援しようという人たちが増えてきたというのだ。また、地域の魅力をアピールする自治体の努力も実ってきている。寄付した金額の使い途を指定できる自治体も大きく増えている。
大きく増えてきた「ふるさと納税」だが、残念ながら自治体が「自立」の道を探るほどの収入源にはまだまだなっていない。相変わらず国から配られる地方交付税交付金が自治体の大きな収入になっている。「国頼み」から脱却できる状況ではないのだ。