また、私がとくに面白いと思ったのは次の記述だ。
(p.21~22)
人の認識にはズレが生じるものだ。同じ発言を聞いていても、その捉え方は人によって異なる。
たとえば議事録を担当する部下が、会議の決定事項を誤った解釈で記録してしまえば、それが事実となってしまう。
そのため、上司や責任者は、会議の進行を務めつつ、自らの手で要点をメモしておいたほうがいいという話だ。
これは部下を100%信用してはいけないという意味にも取ることができる。おそらくこのあたりは毛沢東自身の経験則からきているのだろう。
経営者としては三流、コンサルとしては一流
いかがだろうか。毛沢東のイメージが少し変わった方もいるはずだ。少し話を膨らませればビジネス書になるような内容である。しかも彼はそれを1930年にやっていた。
中国はレーニン主義の政治体制を維持したまま資本主義を取り入れ、経済発展を遂げた。
中国の手法にオリジナリティが感じられるのは、毛沢東がこの作品で書いたような、理論よりも現実を先行させたアプローチで国をつくったからである。ごろつきに話を聞き、資本家にも協力をあおぐ。結果を出すためにはとにかく現場主義、現実主義でなければならない。
こうした考え方はいまの中国でも受け継がれている。
毛沢東は経営者としては三流だった。国を挙げて使い物にならない鉄を大量につくらせたり、文化大革命を起こしたりと、いまの中国政府ですらその失敗を認めているが、彼が一流のコンサルタントであったことは間違いない。そんな「コンサルとしての毛沢東」から学べることはいまでも十分あると思うのである。