その提案の「大義」は何か

物事を進める上で何より大事なのは、「相手がなぜこちらのお願いに合意しなければならないか」という「大義」と、その大義に基づいて「落としどころ」の目星をつけておくことです。

それぞれの会社や相手の事情はあるものの、社会のため、あるいは日本のため、あるいは今困っている人のため、こういうことをしたいので協力してほしいと言われたら、ほとんどの人は理解してくれようとします。

例えば、「プログラミングの才能あふれる高校生が、毎年100人、シンガポールでのプログラミングコンテストに参加できるよう、スポンサーになっていただきたい」と急成長中のITベンチャー企業の社長が依頼されたとしたら、趣旨を理解し、前向きに検討してくれる可能性が高いと思います。

一方、ITにあまり関心がない中小企業の社長なら、重要性そのものを理解していただけるかどうか微妙です。

大義を伝える際の3つの注意点

「大義」を伝えるにあたり、注意するべき点がいくつかあります。

注意点① 一人よがりな提案

問題は、大義があって思いはよくても一人よがりになりがちなことで、「あなたの言うこともわからないではないが、ちょっと偏っているのではないのだろうか」などと感じさせてしまわないようにしましょう。一方的な印象を持たれてしまうと、理解はしてもらえても、合意はしてもらえません。

注意点② 拙速すぎる提案

拙速過ぎる提案は、こちらの足元を見られてしまい、説得しづらくなります。素早く動くのはいいことなのですが、あせっているように見えてしまわないよう、意識して丁寧にやる必要があります。一部しか見ていなかったり、雑だったりすると、後々問題を起こしてしまいがちです。

注意点③ 無理やりな提案

現実的なステップを考えず、あるいは手順を飛ばして、「いいからやりたい」「これは課題が大きいからやめてしまおう」「今までのやり方はだめだから、多少無理をしてでもこのやり方でやるべきだ」という態度も、相手を動かせません。

思いが強すぎ、聞き手がどう感じどう受け取るかを想像していない場合は要注意です。また人の話を聞かない方、頭が固い方、情報収集をあまりせず、偏った情報だけで判断しがちな方は、このパターンに陥るケースが多いようです。

もし提案に対して指摘されても、しっかり聞きましょう。聞く耳を持たなければ、相手を動かすための出発点に立てません。大義が大義として活きなくなってしまいます。