議員連盟は捜査共助に応じないことを要請

周氏の行く末については、日本でも多くの人々が関心を持ってその推移を追っていることだろう。

すでに超党派議連で構成される「対中政策に関する国会議員連盟」が、日本政府に対し、中国・香港政府からの国安法に基づく捜査共助には応じないことを求め、日本への入国を希望する人に対し、就労ビザの緩和など受け入れ態勢の強化も要請する動きを進めている。

一方で、民主活動家の多くは、香港の旧宗主国である英国に逃れているケースが散見される。前出のサイモン・チェン氏は、いったん、英国からワーキングホリデービザが付与され、その後、国安法施行の直前である2020年6月26日に英国への政治亡命が認められている。

周氏とともに香港衆志の主要メンバーで2014年の大規模デモ「雨傘運動」リーダーの1人だった羅冠聡(ネイサン・ロー)氏(27)も国安法施行直後の7月2日、香港から出て英国にたどり着いている。

過剰対応する中国に日本はどう対処するのか

では、周氏はどうなるのか。

報道でも知られているように、パスポートは当局に没収されている上、監視の目も厳しいとされ、外国への脱出を図ることは相当困難な状況だ。「日本が救いの手を差し伸べるべきだ」という声も高まっているが、他国への忖度うんぬんを語る以前に、日本は政治的迫害を受けている亡命者を受け入れた実績がほとんどない。

「仲間」たちがいる英国への脱出がより妥当な選択肢とも思えるが、周氏はそもそも英国本土のパスポートも持っていた。ところが、香港立法会議員への立候補に当たり、二重国籍者では資格がないとして、自ら英国籍を返上した経緯がある。国安法の施行という香港事情の大きな変化が生まれたといえ、果たして英国政府は、一度国籍を手放した人物に対し、再付与を行うだろうか。

目下の状況を見ていると、中国が「外国勢力とつながる香港の民主活動家」に対し、過剰なまでの反応を起こしている。罪状の是非はともかくとして、当局が「日本のサブカルチャーに興味を持つ20代前半の女性を逮捕する」という状況は、政治にも国際関係にも興味を持たない日本人のノンポリ層の間にも、中国との関係継続に疑問符を付ける人が増えることだろう。海外旅行の行き先として、中国本土や香港への渡航を避ける動きが広がることも致し方ない。

米国と中国の衝突の度合いが深まる中、日中関係もそれに翻弄される可能性が高まっている。日本政府はいよいよ中国に対する態度を明確にしなければならないのではないだろうか。

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