時間を戻るには量子状態が最も現実的
また量子の世界では、時間も連続的ではなく、とびとびの値をとって不連続になっています。この量子世界の特徴を最大限表現したものが、ロヴェッリ博士の著書『時間は存在しない』(訳/冨永星、NHK出版)です。彼は、ループ量子重力理論という先駆的な理論を提唱した1人です。ここでは、時間という概念を導入せずに、物理現象を語る世界が描かれていますが、内容はいささか難解なので省略させてもらいます。
言いたいことは、時間を戻ることを考えると、量子力学の世界が一番現実的にできる可能性が高いということです。つまり量子状態になれば、ひょっとすると過去へのタイムトラベルが可能なのではないかと想像します。
このような描き方をしているSF作品に、海外ドラマ『12モンキーズ』があります。1995年に一度映画になったもののリメイク版ですが、2015年から2018年まで放送され、シーズン4までになる大作です。タイムトラベルものの長編物語として非常に面白いので、ぜひ一度見てみることをお勧めします。
長いストーリーですが、簡単に言うと、ある年に世界に蔓延したウイルスを食い止めるために、タイムトラベルで過去を変えるということが大きな目的です。全人類の9割以上がこのウイルスによって死滅して暗闇の地下で暮らす2035年の未来において、タイムマシンが開発されます。今のコロナ禍の世界を考えると、全く非現実的ともいえない時代としてのリアルさがありますね。
人間をタイムワープさせられるのであれば服も送れるはず
これまでタイムワープの原理として、少なくとも量子状態に分解して転送されるべきだということを述べてきました。つまり、転送先では、必ず量子状態のミクロな粒子からマクロな物体に再構成しなくてはいけません。
そこで、転送する物質として生物の身体と無機物などの金属を比べてみると、再構成しやすいのが金属であるといえます。例えば、鉄であれば、たった1種類の元素が無数に整然と並んでいるだけの単純な構造ですが、有機体である生物ではそうはいきません。DNA1つとってみても、炭素や水素、窒素など数種類の元素を、複雑に立体的に構築する必要があります。
ですから、マクロなものを転送する場合、物質や無機物を転送するほうがはるかに簡単だといえます。そう考えると、生物の身体を送るよりも服や武器を送るほうがむしろ容易な気がします。
つまり、人間を送る場合、身体と着ている服でどちらが転送させやすいかといえば、服ということです。転送先での再構成を考える限り、裸の意味は全くありません。身体が再構成できる技術があれば、服などもっと容易に転送できてしまうはずだからです。