実際に繁華街を歩いたり、中心部で地下鉄に乗ったりすると外国人観光客が圧倒的に多く、英語がまったく聞こえてこないという「かつての状況」に着実に戻っていると感じる。

実際に調べてみると、格安航空券の価格は安いものだと片道5ポンド(785円、税・各種費用等込み)で買える区間も出現している。こんなに安いなら旅行しない手はないとあちこち外国へと出かけている人も少なくない。

筆者撮影
格安航空券の販売サイト。安いものでは片道5ポンドで買える区間も出現している

なぜこれほどまでに感染を恐れないのか?

このようにイギリスでは、コロナの行動制限があまりにも緩められ、水際対策も事実上「撤廃」とまで言える状態に達しているわけだが、これを受け、街に出るともはや「感染のリスクだらけ」の状況にも見える。

なぜ、人々はこれほどまでに感染を恐れないのだろうか? もし陽性だったとしてもワクチンのおかげで無症状か軽症で済むケースがほとんどで、重症化リスクも減ったため、健康状態悪化への懸念を考えている人が少ないからだ。

ロンドン市内でイタリアンレストランを経営する60代女性は「私の場合、コロナにかかってひどい目に遭った。たまたま、デリバリー事業がうまくいったのでお店は何とか切り抜けられたけれど、店にまったく人が来ない状況が長期間にわたって続いたのは精神的に大きな負担になった」とした上で、「二度とロックダウンなんて体験したくない」と話している。

日本人旅行者の受け入れを行っている旅行業の50代男性は、イギリスの方針について「コロナはもうパンデミックではなくエピデミック(流行と収束を繰り返すこと)、あるいはエンデミック(恒常的に流行している状態)だ、と保健当局が判断したのではないか」と指摘する。「感染者が増えても死者は増えない、重症者も増えない、病床も逼迫ひっぱくしないという状況だから、経済を回すための政策に舵を切ったのだろう」とみる。

この男性は日本の現状についても言及してくれた。感染者数はイギリスよりも圧倒的に少ない日本だが、「イギリスのように、そろそろ出口戦略を念頭に国民の意識を変えていくことが必要なのでは」と話していた。

感染状況が最悪だった夏の日本のほうが怖い

これまでに出た意見を総括すると、イギリスの人々を安心させているのはワクチン接種による重症化予防と、医療体制が確保されているという2点があるようだ。