「実証実験の開始」は拙速だったのではないか

実証実験では認定事業者のものに限って自転車専用レーンでの走行を認め、ヘルメット着用も任意にしている。東京や大阪などの一部地域では、特定の貸し出し場所を設けて共用の実証実験が行われている。

このため全国各地で電動キックスケーターの規制が緩和されたと思い込んでいる利用者が多いようだ。事実、都内では違反や事故が続いている。

すでに海外で電動キックスケーターはブームになっていたが、事故などが相次いだことから、規制強化に踏み切る国が目立つ。そもそも遅れて導入して、規制緩和を議論するという日本の動きは、こうした流れと逆行するものだった。実証実験の開始は拙速だったのではないだろうか。

認定事業者はすでに設備投資を済ませている。事業継続ができなくなれば、そのまま損失になるだろう。中国で「シェア自転車」が大量に廃棄されたことは記憶に新しい。保守的といわれるかもしれないが、「やってみて、ダメならやめればいい」という姿勢は、日本社会には不向きではないだろうか。

読売社説は「利用者にルールが周知されていない」と指摘

読売新聞は「運転マナーとルールの周知を」という見出しを付け、10月12日付の社説で電動キックスケーターについて取り上げている。

大阪市内の歩道で女性がひき逃げされた事件で、逮捕された男が乗っていた電動キックスケーター=2021年6月4日、大阪市

読売社説は「手軽な移動手段として利用者が急増する電動キックスケーターの事故や違反が相次いでいる。運転マナーやルールを周知し、安全の確保に努めることが不可欠だ」と書き出し、「無免許運転や信号無視などのほか、猛スピードで歩道を走る人らが後を絶たない。警察の警告件数が昨年の10倍以上になっている地域もある」と指摘し、こう分析する。

「トラブル増加の背景には、利用者にルールが周知されていない状況があるのだろう」

その通りだろう。重要なのは周知の徹底である。現状ではそれが不足している。

さらに読売社説は「人にケガを負わせる事故も目立っている。歩道で歩行者と衝突し、重傷を負わせて逃げたとして、運転者が逮捕されたケースもある。警察や自治体は、利用者にルールを周知し、運転マナーを守るよう呼びかけることが重要である」と訴える。