現役東大生の布施川天馬さんは、家庭の事情から1日8時間のアルバイトを週3日続けながら東京大学に合格した。布施川さんは「“親ガチャ”という言葉がはやっているが、自分の人生は生まれた家庭だけでは決まらない。その言葉に甘えて可能性をつぶすのはもったいない」という——。
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東大へ入るには中学受験をするのが王道

東京大学といえば、日本でもトップクラスの権威を誇る、言わずと知れた有名大学です。その通称である「東大」はさまざまなマンガ作品、テレビ番組などにも使用されています。

実際、東京大学に入るには大変な努力が必要です。その入試の難易度もさることながら、年間3000人しか入れない狭き門なので、トップ層同士のつぶしあいに勝てなければ入学することはかないません。

それでは一般的な東大生たちは、この熾烈しれつな受験戦争に勝ち抜くために何歳から準備をしているかご存じでしょうか。

答えは10歳です。中学受験が本格化する小学校4年生の時点で、東大生になることができるかどうかの戦争は始まっているのです。もちろん、これは中学受験から考えた場合ですから、小学校から選ぶなら、もっと早い段階から始まることになります。

どうして彼らはたかが大学受験に10年もかけるのでしょうか。それは、有名中学校に入れるかどうかだけで、東大に合格できるかどうかの確率が大きく変わってくるからです。

あまり知られていない事実ですが、実は東京大学入学者3000人のうちの約25%、つまり4人に1人を一部の有名私立高校10校からの合格者が占めています。もちろん、これらの学校に通う学生の優秀さもありますが、東大合格者が多い学校には東大対策の知見が多くたまっています。これらの学校に合格するだけで、大きなアドバンテージとなるわけです。

そしてそうした私立高校のほとんど全てが中高一貫校であり、高校からの入学が非常に難しくなっているのです。だから、中学校受験をして入学することが王道となっているのが現状です。

東大生の親の6割以上が年収950万円以上

そして、このような「エリートコース」をたどるには、非常に多くのお金がかかります。塾通いをして中学受験専用の追加学習を行わなければ、東大に毎年学生を輩出するような学校には、ほぼ確実に合格することができないからです。

だからこそ、東大に通う学生たちの家庭の年収は非常に高い。東京大学の「学生生活実態調査」(2018年)によれば、東大生の親の6割以上が年収950万円以上あるそうです。これは、日本の世帯年収の平均額が550万円程度であることを鑑みると、大変高い数値であることは間違いありません。言ってしまえば、金持ちが非常に多い学校なのです。

一部の学校や塾の出身者が東大進学に非常に強いおかげで、東大進学後に会うのも、ほとんどが高校時代の同級生や、通っていた進学塾の同期生というのも珍しくありません。そんな環境なので、東大の入学後の顔合わせイベントでは、「はじめまして」の声よりも「ひさしぶり!」の声の方が多いのです。

そんな異様な空間にも、ぽつぽつと、話に混ざれない学生がいます。周りに知り合いがおらず、「なぜか顔見知りが多い」空間に戸惑っているのです。そのような様子の子は、たいていが非進学校から東大に来た子であったり、地方からたった1人で上京してきた子だったりとさまざまです。少ないながらも入学してきた「非東京生まれ東京育ち」だったり「裕福ではない家庭出身」だったりする学生たちは、ほぼここで面食らいます。