アルバイトしながら東大を目指すことは普通だと思っていた

アルバイトの面接では、正直に「東大を受けたいが、お金が足りない。だからバイトさせてほしい」ということを話しました。いま考えると「シフトに自由に入れません。すぐにやめるかもしれません」ということを話したに等しく、こんな僕をよく受け入れてくれたなと思います。当時僕を面接してくれた店長には頭が上がりません。

この話をすると「バイトしながらでよく東大に受かったね⁉︎」と驚かれます。しかし、当時の僕はそんなことを全く考えもしませんでした。自分に自信があったからではありません。

「東大は学費が安いし、頭のいい学校なんだから、全国から貧乏でも勉強したいって人が集まるんだろうなぁ」と本気で考えていたからです。東大に入るような学生は、自分のように貧乏でも野望を秘めて勉強する苦学生がきっと多いから、勉強の合間のアルバイトくらい、当然みんなやっているだろうなぁと、心の底から本気で思い込んでいたのでした。

東大入学後、そんな思いは打ち砕かれることとなります。勉強の合間にアルバイトをしていたどころか、「近くの塾で特待生認定を受けてたから、いつでもタダで出入りし放題」であったり「高校時代に自腹の留学プログラムで海外に行っていたから、現役だけど年上」であったり、僕が、人生の中で一度も会ったことのない人種ばかりが集まっていました。

周りとの資金力の差を痛感した出来事

僕が「バイトしながら受験をした」というと、正気を疑うような目をされます。僕には「なんでそんなことをする必要があるの?」とでも言いたげに見えました。みんなはなんて快適な受験ライフを送っていたのだろう、と少しうらやましくなる部分もありました。

周りとの資金力の差を痛感したのは、やはり勉強に関してでした。みんな、勉強する際に全く金に糸目をつけないのです。「留学したいなぁ」と言っていた友人がフッと姿を消したかと思えば、2週間後に中国土産をもってきたことがありました。たったの2週間とはいえ、留学となれば数十万円くらいは軽く消し飛びます。

また、法学系の学部に通う友人が忙しそうにしているので「どうしたの?」と聞いたら、「最近、法学系の就職予備校とダブルスクールを始めたんだよね~」と言われたこともありました。

界隈では有名なこの塾はとても評判が高く、東大生の友人も多くが通っているようですが、代わりに学費も高く、年間100万円以上かかるようでした。東大の学費と合わせても150万円! もし僕が通うなら、奨学金をいくら借りて、それを何年かかって返済することになるのでしょう。