「説明会では、最初に作成したシナリオをもとに、現状と将来ビジョンを説明し『だからこういう学生を求めている』と、ストーリー仕立ての話をしてもらいました。その後、社員と交流できる少人数ごとの座談会を設け、学生が持つマイナスイメージや不安要素を解消するように努めました」

これが「入社意欲=購買意欲」に繋がり、説明会に参加した29名のうち、なんと24名が選考を希望した。

面接においても黒水さんは様々なアドバイスを行った。学生が最終的に入社を決めるかどうかは、面接時の印象で左右されることもあるからだ。

「面接での注意点は、学生に対して威圧的な態度を取らないこと。面接官には、なるべく笑顔で口調や声のトーンに気をつけてもらいました」

面接を通じてさらに会社に興味を持ってもらうため、面接官自身も最初に自己紹介をするよう助言した。

「面接官には仕事内容だけでなく、あえて趣味や休暇の過ごし方なども話してもらうようにお願いしました。学生も親近感が湧きますし、社員たちが仕事だけでなく、プライベートも充実させていることが伝わります。また、面接の途中で随時学生のほうからも社員に質問できるようにしました」

黒水さんは、面接は一方的ではなく「相互の対話の場」と考えることが大切だと述べる。リンク・アップは9名に内定通知を出し、そのうち7名が内定承諾書にサインした。当初の採用枠は5名であり、それ以上の成果をあげたのである。

しかし内定承諾書は単なる仮契約にすぎない。内定から入社まで半年以上あり、学生の中には複数の内定を得ている人や、他社を受けている人もいる。

せっかく選び出した「自社に合った優秀な人材」を他社に奪われないためにも(4)「クロージング・フォロー」は欠かせない。採用においては、売ったら終わりの営業ではだめなのだ。

「なかには、ネームバリューがなく、社員十数名という部分に親が心配を寄せているという内定者もいました。ご両親の信頼を得るために、採用担当の黒田専務に真摯な手紙を書いていただくなど工夫をこらしました。ほかの内定者にも暑中見舞いやクリスマスカードなどをマメに送るなどして、連絡を取るようにしました」

採用人数が少ない中小企業だからこそできる細かな気遣いであり、営業活動である。黒水さんは内定者間の繋がりを強めるため、内定者を幹事とした懇親会を開くことも提案した。

「内定者が6人いたら少なくとも6回は懇親会が成り立ちます。それを写真に撮って採用担当者である専務に送り、参加した学生にメールを送ってもらうなどしました」