JAL、シティバンクとの残念な共通点
なお、2010年に会社更生法適用を申請して一旦破綻したJALは、JTB本社ビルと道路を隔てて向かい合っているJALビルディングを野村不動産に売却し、「野村不動産天王洲ビル」と改称された後も引き続きテナントとして入居している。
また、2014年には、JTB本社ビルと連なり、天王洲シーフォートスクエアの一角にはシティバンクの日本拠点本部ビル、通称シティグループセンターがあった。シティバンクは2014年、日本事業の撤退・縮小に伴い、同ビルから撤退している。
そして2021年、同じく天王洲シーフォートスクエアの一角にある地上20階地下1階高さ101メートルのJTB本社ビルが、売却となった次第である。
天王洲アイルに本社を構えるJAL、シティバンク、そしてJTBの3社がそろって売却や撤退に追い込まれたのは偶然ではない。3社には共通項があるのだ。
それは、先ほど紹介したT.Y.HARBORなどにおける優雅なハーバーランチに象徴されている。どういうことだろうか。
3社に共通するのは、グローバルな仕事と優雅な職場というイメージとは裏腹に、その居心地のよさから、人件費など高コスト体質が仇となり、顧客ニーズや市場の変化についていけずに、破綻や撤退や売却に追い込まれたということだ。
「安定・高待遇・自由な職場」は存在しない
ベイサイドのオフィスで高い給料を得ながら、グローバルで華やかな仕事をし、ハーバーランチを優雅に楽しむ自由な職場、そして安定した雇用制度と、成長する企業業績。これらが共存して持続することはない。①安定かつ②好待遇で③自由な職場、というのはこの世には存在しないのだ。公務員のように雇用が安定していれば、民間企業より給与が低かったり、まさに官僚的だったりして自由度がないものだ。逆に、高給で自由度も高い外資系企業などには、頻繁にレイオフや転職があり、安定や長期雇用がないものだ。
安定し好待遇で自由な職場、仕事内容も満足な職場、というものはまずないはずなのに、それを一定期間実現していたのが、JALであり、JTBであった。それが大学生の就職人気の高さにも表れていたのだ。しかし、それは何かを犠牲にした幻想であり、決して長続きするものではなかった。
ベイサイドの立派なオフィス、一見世界をまたに掛けた仕事、業界比、高額な給与に福利厚生、潰れることもレイオフもない(幻想)、という社員にとって楽園のような環境下、このまま居座りたいと思う社員から改善や革新や収益は生まれない。レイオフはともかく、また、たまの優雅なハーバーランチはともかく、普段は、昼食時間を削ってでも、仕事をするといったある程度の社内競争や営業マインドがやはり勝ち残る企業には必要なのだろう。