JTBがコロナ禍で苦境に立たされている。2021年3月期には過去最悪の最終赤字を計上、9月には東京都品川区の自社ビルを売却するに至った。金融アナリストの高橋克英さんは「JTBが業績悪化に陥った原因は、コロナ禍だけではない。それ以前から抱えていた問題がある」という――。
旅行大手JTBのロゴマーク
写真=時事通信フォト
旅行大手JTBのロゴマーク=2020年6月25日、東京都品川区の同社本社

2021年卒の大学生就職人気はNo1

マイナビ・日経 2021年卒大学生就職企業人気ランキング」(有効回答3万630名)の文系総合で首位だったのがJTBグループだ。2位全日本空輸(ANA)、4位日本航空(JAL)に加え、11位エイチ・アイ・エス(H.I.S.)、18位近畿日本ツーリストと、その知名度とグローバルなイメージの良さもあり、旅行・航空業界の企業が上位を独占していた。

ところが、今年4月に発表された2022年卒版(有効回答4万1093名)では、東京海上日動火災保険がトップ、2位第一生命保険、3位味の素となり、コロナ禍により、旅行・航空業界の企業が軒並みランクを下げた。JTBグループは、前年度トップから35位にまで凋落。JALは45位、ANAは64位。H.I.S.と近畿日本ツーリストに至っては100位圏外となった。なお、JTBグループでは、障がい者を除き、2022年度新卒採用を中止している。

2021年卒の調査が行われたのは2019年12月~2020年3月、2022年卒の調査が行われたのは、2020年12月~2021年3月だ。コロナ禍が本格化する前と後で、大きな違いが出た。

売上高1兆円、従業員2万人の大企業

JTBの歴史は、「英米人たちに日本の真の実情(姿)を知ってもらうことを目的」(JTB公式サイトより)として、1912年に創設されたジャパン・ツーリスト・ビューローにまでさかのぼる。その後、社団法人、財団法人へと姿を変え、1963年に株式会社化し現在に至る。海外旅行ブームもあり、業績は拡大し、海外法人を含む子会社の設立やM&Aも積極的に行ったことで、グループの売上高1兆円従業員2万人を誇る名実ともに国内トップ企業となった。

お馴染みのパッケージツアー「ルックJTB」「エースJTB」「旅物語」に代表される旅行業のほか、「JTB時刻表」や旅行雑誌「るるぶ」などの出版業に加え、直近では、地域活性化事業、ふるさと納税事業、法人向けソリューション事業なども手がけている。世界的な旅行市場の拡大、東京オリンピック特需への期待もあり、JTBは業界盟主の座をさらに強固にするとの見方もあった。