1/4を人員削減、夏冬の賞与はゼロ

しかし、コロナ禍による旅行需要急減により、JTBは天国から地獄に突き落とされることになる。2021年3月期決算は、売上高が前年比71%減少の3721億円となり、最終赤字が1051億円と過去最悪となった。

このため、700人規模の追加リストラや今期夏冬の賞与ゼロなどを発表したことで、昨年11月の発表分と合わせた人員削減は、全体の1/4に当たる7200人規模にまで膨れ上がった。また、2022年3月末までに国内の約25%の115店を減らすとしている。

そして、2021年3月末に減資を実施。23億400万円の資本金を1億円に減資し、「中小企業」となる「禁じ手」まで使った。中小企業となることで外形標準課税の免除など税負担の軽減を図っている。

さらに、2021年9月末には、日本政策投資銀行とみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行に対して優先株による第三者割当増資を実施し、300億円の資本増強を実施している。なお、これら銀行などからの長短借入金の合計は、前年度899億円増加の1076億円にまで膨れている(2021年3月末)。

裏地付きの銀行看板
写真=iStock.com/y-studio
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まさに、学生人気No1の名声と業界盟主のプライドを捨て去り、なりふり構わず、今そこにある危機に対処するため、人員と店舗のリストラ、減資、資本増強、借入増加とありとあらゆる止血策を繰り出している。それだけ急を要し深刻ということだ。

かつては天王洲で優雅なランチを楽しんでいた

そして、ついに今年9月には、東京都品川区の本社ビルと大阪市中央区のビルを売却するに至った。日本経済新聞(2021年9月28日)によると売却先は外資系ファンドだという。売却額は非公表ながら数百億円とみられる。本社ビルについては引き続き賃貸契約を結んだ上で利用するという。

JTBの本社がある天王洲アイルは、天王洲運河などに面したいわゆるウォーターフロント地区で、品川と羽田空港の中間地点にあり、東京モノレールやりんかい線の駅が通る。複数のオフィス商業複合ビル、商業店舗、飲食店、劇場、アートギャラリー、イベントスペースなどからなる再開発街区である。その一角にあるT.Y.HARBORは、醸造所を併設したブルワリーレストランで天王洲エリアのランドマークだ。約350席を有するダイニングは、クラフトビアバー、個室、2階席、そして運河を臨めるテラス席からなり、目の前に広がる運河には都内唯一の水上ラウンジが浮かぶ。平日ランチタイムには、2000円近いメニューもある“贅沢なランチ”にもかかわらず、JTBやJALなど近隣オフィスの社員でも埋まる優雅な場所だ。