近年の電力自由化の波は、欧米でも日本でも、新電力と呼ばれる何百もの電気の小売業者を産んだ。新電力には、大規模な再エネ発電を持っている事業者もあれば、市場で調達した電気を転売して利ざやでもうけている中堅、あるいは零細企業もある。

調達した電気を販売している新電力は、仕入れ価格が急騰すれば、たちまち窮地に陥る。一方、大規模な再エネ発電施設を持っている新電力も、悪天気が続けば売る電気がなくなる。実際、発電の4割以上を風力に頼っている英国では9月に長く凪が続き、9月23日、ようやく十分な風が吹いたが、時、すでに遅し。その日に中堅の電力販売会社が2件倒産したという。英当局の発表では、9月末の時点で倒産は10件。

日本が絶賛した「エネルギー転換政策」の末路

当然、この状況は日本にとっても対岸の火事ではない。すでに今年の初め、日本の電力事情は窮地に陥っていた。悪天候で再エネがなくなり、諸事情で天然ガスも逼迫した。たとえ海が荒れただけでも、船は接岸できなくなる。いきおい停電の危険が迫ったが、国民が不安を感じないようにと、政府がそれをひた隠しにするうちに、天候の回復でどうにか切り抜けた。しかし、今年の冬、同じことが起これば、またうまくいくとは限らない。

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いずれにせよ、日本が絶賛し、今も一部では絶賛が続いているドイツのエネルギー転換政策は、現在、まっしぐらに「電力不足」と「値上げ」という最悪の事態に向かって突き進んでいる。

真の問題は、ドイツのエネルギー転換政策そのものに矛盾が多く、非現実的でありすぎるということなのだが、これまでそれを棚に上げたまま、強力に反原発と再エネ拡大を提唱してきた主要メディアは、そう簡単に方向転換もできない。とはいえ、いくら何でも停電の危険は無視できないため、天然ガス不足と電気代の高騰を報じつつ、勘違いの場所で犯人探しをしている。

特に笑止千万なのは、電気代の高騰への対策として、節電の細々した方法から、家の改装まで、「良いアイデア」をたくさん挙げた記事が出回っていること。国民をバカにしている。