年長の人を無条件に敬う社会から変わっている

2017年1月に配信されたニュースにおいても、『居丈高なシニア層についての店員の困惑や不快感』についての記事が取り上げられていました。その記事に寄せられた意見としては、「会社での役職が、プライベートでも通用すると思っている人が多い気がする。『誰もキミのことなんか知らないよ』と誰かが教えてあげるべきだ」というものがありました。

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「50代以上の人たちの時代は男性が今以上に強く、尊重されていた。当時だって不満に思っていた人はいたはず」という意見も寄せられていました。

似たような状況を目撃したことがある読者の方も多いでしょう。

今の社会のありようは、「年長(高い地位)の人間は無条件に敬うべきだ」という価値観が薄くなっていっているところです。リスペクト(尊重)されるべきは、本来その人個人の人柄や技能、能力です。年齢や地位そのものではありません。

偉いのは「地位」であって個人の人柄ではない

しかし、人は地位と自分の区別がつかなくなってしまうことが多くあります。権力をもつ地位にあるから、その職権から発せられる業務命令に部下はしたがうのであって、かならずしもその人個人に心服しているわけではありません。

どんなことがあってもこの上司についていこうなどと、殊勝なことを思う部下は少ないかもしれません。ただ、上司に逆らうとボーナスを減らされるので、したがっているだけという可能性もあるのです。

こうした力のことを心理学では「勢力」と呼び、ボーナスを減らす権限を振るうような勢力を「罰勢力」、評価を高くして、職階を引き上げる権限などを「報酬勢力」と呼びます。いずれも職業上の地位にともなう権限によって成立しているだけであって、その地位にある個人の人柄がエラいわけではありません。

それなのに、日本ではこの個人と職業上の権限を、区別せずに混ぜてしまう感覚が横行しがちなのです。