「慢性の頭痛」であっても、放置してはいけない

いわゆる一般に「頭痛」と呼ばれ、頭痛の約9割(約3000万人)を占める慢性の頭痛は、「ズキンズキンの片頭痛」と「頭全体が締めつけられる緊張型頭痛」、「一筋縄ではいかない薬物乱用頭痛」の3つに分かれます。急性の頭痛と異なり「すぐに命には関わらない」ものの、「健康寿命には大いに関わる」ため、決して侮れません。

慢性の頭痛がやっかいなのは、少し我慢すれば何とか日常生活を続けられるからです。だからといって素人判断で放置したり、誤った治療を受けたり、生活習慣を改めないでいると、QOL(生活の質)とADL(日常生活の活動度)が明らかに下がってしまいます。

薬の効かない緊張型頭痛なのに薬を飲み続け、効かないまま「そのうち治るだろう」と放っておくと、まず首から肩のコリがひどくなっていきます。さらに腰、ひざ、下肢と徐々に痛みが広がっていきます。

われわれが歩いている時に視野がぶれないのは、首から上で体のブレをコントロールしているからです。長引く頭痛によってそれがうまく機能しなくなると、下半身でバランスをカバーするようになり、腰痛、ひざ痛、下肢痛を招き、寝たきりリスクが高まります。

寝たきりのリスクについては、著者の神戸利文さん、上村理絵さんと私の鼎談ていだんを収録した『道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』(アスコム)の第6章をご覧ください。健康寿命の延伸、患者・家族の医療リテラシーの向上に加え、医者も知らない急性痛と慢性痛の違いもここで説明しています。

書籍タイトルの通り、青信号の間に道路を渡れないリハビリ難民が日本には200万人いると言われています。スタートラインで頭痛の見極めを間違えると、痛みをこじらせ、身体機能を弱らせ、怖くて道路を渡れないため買い物にも行けなくなり、健康寿命にすら影響する可能性があります。

3つの要素が絡み合う慢性の頭痛

本当に慢性の頭痛に対処したいのなら、頭痛に対するとらえ方を根本的に変えなければなりません。「片頭痛」「緊張型頭痛」は「血管性」「筋性」「心理社会的」の3つの要素が何らかの形で原因として絡み合っています。

これをわかりやすく図式化したものが、図表1です。国際頭痛学会の頭痛の分類はもっと細かいのですが、臨床的にはこのシンプルな分類でほとんどが対処可能です。

提供=北原雅樹医師