警察が「個人の生命、身体、財産の保護」をやらなければならない限り、その範囲は今後もどんどん増えていく。

余計なお世話なのはわかっているけれど、警察庁長官は増える一方の政府と市民からの要請に対して、どこまで応えるかを決めなくてはならない。

具体的に言えば警察法第二条を改正して、「ここまでが警察の仕事ですよ」と記すことなのだが……。

なぜ、警察庁は「警察法の改正」をできないのか

だが、警察法の改正はこれまた難しい。

野地秩嘉『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』(朝日新書)

かつての長官、後藤田正晴は大学紛争時代、こんなことを言っている。

「自民党は警察に火炎びん処罰法を立法化せよ、といっているが、政治家のいうなりに警察が法案を立案したら大変だ。最後には与野党の取り引き材料になって法案はつぶれ、警察だけが悪者にされる。(略)日本の国会では『警』の字のつく法案なんて交通以外はムリだ」(前掲『警察庁長官の戦後史』)

後藤田の言ったことは今も続いている。国会でも交通、情報通信以外の警察活動についての法案を通すのは簡単ではない。警察法を改正するというと、国民もマスコミも警戒するから、それを乗り越えるのは簡単ではない。他の中央官庁の最大の仕事は法律の企画、立案だ。しかし、警察庁では事実上、その部分に枷がはめられている。

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