「どうするとより幸せになれるか?」から始まった

それでも、お酒が大好きだったので、東京ではお酒を控えるけれど、地方では好きに飲んでいい、というルールにしていたのだが、気がついたら、お酒に弱い体になり、地方でも飲まなくなり、完全にお酒をやめるようになってしまった。ここにお酒をやめようという意思はどこにも介在せず、気づけば、お酒を体が受けつけなくなっていた。毎日データを見て、試行錯誤していたら、予想もしていなかった、ずいぶん遠いところへやってきた。

データをもとに仮説を立てる中で、もともともっている大きな問いが更新されることもある。仮説づくりの一番はじめは、「どうするとより幸せになれるか?」という「問い」だった。そこから、睡眠のデータを「観察」することを始めた。もともとは、「充実した日中を過ごすと、良い睡眠を得られるのではないか」という仮説をもっていた。だから、日中はやりたいことをたくさん詰め込んでいた。そうすれば、疲れ果てて眠るからだ。

睡眠を起点に、生活を全て組み直した

しかし、データと毎日向き合っているうちに、僕の中で、真逆の仮説が生まれた。

「良い睡眠があると、日中を充実させられるのではないか?」

今は、この仮説をもとにスケジュールを組んでいる。東京と福岡の2拠点生活を行っているので、朝に飛行機で移動するため、6時に起きる日がある。いい睡眠のためには、起床時間を変更しないほうがいい。これまでは、7時に起きていたのだが、最後の打ち合わせの時間を1時間早め、移動しない日も6時起きにした。そして、午前中に散歩やランニングをして、適度な疲労を感じられるようにした。睡眠を起点に、生活を全て組み直した。

写真=iStock.com/BartekSzewczyk
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結果は、長期的にみないとわからないが、今のところ、非常にうまくいっていると感じている。

データから仮説を作ったり、更新したりする方法はとても有効だ。だが、データを客観的に眺めようとしすぎると、仮説が思いつかない。僕の事例のように、「より幸せになるために、睡眠を使いたい!」というような「欲望」をもちながら、データをみると仮説が生まれる。思いついた仮説とデータを見比べるときには、客観的になる必要があるが、仮説を作るときには、思いっきり主観的になるほうがいい。

観察力を鍛えるには、客観と主観、具体と抽象を、適切なタイミングで行き来する必要があり、その切り替えのタイミングを理解していくのが、観察力を上げる肝とも言える。