Slackの行動履歴を分析し、社内の状態を見える化

コルクは、コロナをきっかけに完全リモートワークに切り替えた。オフィスが快適であるために工夫をするように、オンラインの業務を快適にするためにはどうすればいいだろう。オンラインであっても、コミュニケーションを活発にして、社員が仲良くなれる会社にしたい。そんな欲望をもち、データを集めることにした。データの収集は、ベンチャー企業リバネスに依頼をした。

佐渡島庸平『観察力の鍛え方』(SB新書)
佐渡島庸平『観察力の鍛え方』(SB新書)

リモートワークになり、使うツールはZoom、Slack、Notionなど多岐にわたる。その中でも中心的で比較的分析がしやすい、Slackのデータを集めた。Slackへの投稿頻度が下がっていることは、何を意味するのか。Slackへの投稿頻度の高さと、チームの成績には相関があるのか。そんなふうに問いを立てて、Slackの行動履歴を分析し、社内の状態を見える化した。

まず明確になったのは、社員ごとのSlackの利用傾向だ。それぞれが家族の事情で、多様な働き方をしていることを、理解はしていた。でも、はっきりとデータで見ると、誰がどのように働いているか、想像しやすくなった。

社員のエンゲージメントスコアが改善した

たとえば、子育て中のあるメンバーは、夜の18時〜21時の時間帯はSlackを一切触らない。一方で、土日も深夜もおかまいなしに投稿するメンバーもいる。データを見ることで、メンバー間で話し合いが発生した。そして、ある部署では、Slackのデータをもとに、どういう働き方をしたいかを改めて各自が考え、「自分のコアタイムはこの時間」と互いに宣言することにした。コアタイム以外の時間は、相手からの返信をそもそも期待しないようにする。

そのような工夫によって、毎月測っている社員のエンゲージメントスコアが改善した。働きやすくなったと感じたメンバーが増えた。リアルなオフィスであれば、社員と接しながら、今の会社の状況を推測して、施策を決める。だが、リモートワークだとデータしか見られない。全ての社員同士のやりとりを確認することは物理的に無理なので、データから仮説を立てて、施策を決める。データという抽象から具体を観察して、仮説を立てるのだ。

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