胸部と腹部のCTで首からお腹の下まで輪切りにして見ることで、肺、膵臓すいぞう胆嚢たんのう、肝臓、腎臓、卵巣など、とくに予後が悪いといわれるがんをはじめ、ほぼ全身のがんを完治可能な早期段階で発見することが可能になります。

また、心臓の血管に異常があれば胸部CTに映りますから、改めて冠動脈CTで詳しく調べることで、心筋梗塞などを防ぐことができます。

これでカバーできないのが消化器のがんで、胃カメラと大腸カメラ(内視鏡検査)で直接粘膜を見る必要があります。胃、大腸、食道、十二指腸の異変をすべて早期にチェックでき、また、小さな病変であればその場で切除ができますから、非常に優れた検査といえます。

これに脳のMRIを加えればほぼ完璧です。脳のMRI検査で破裂しそうな動脈りゅうや小さな梗塞を見つけることができますし、この段階で予防的な処置ができれば、命を落としたり後遺症が残ったりするような大発作も回避できます。また、脳腫瘍も早期に見つけることが可能です。

とくに、くも膜下出血は働き盛り世代に多発するので注意が必要です。罹患りかんしやすい体質が遺伝するといわれていますから、親類縁者にくも膜下出血の患者さんがいれば調べておくことをおすすめします。

「血糖値を下げる」から「糖尿病と生きる」へ

見てきたように、糖尿病患者さんが血糖値に翻弄ほんろうされる時代はすでに終わりを告げました。糖尿病のみならず、合併症や命にかかわる病気への対処と治療を、「人生100年」を見据みすえていかに継続していくかを考える時代になっています。

とりわけ、患者さんのQOL(生活の質)の維持の観点からは、「腎症とどう付き合うか」、これが最大の課題となっていると言っていいと思います。

本稿の冒頭で、糖尿病になると新型コロナの重症化リスクが上がるという話をしましたが、実は、HbA1cが8.1%と血糖コントロール不良の人は新型コロナウイルス感染による死亡率が一般の人よりなんと10倍に上がるという報告もあります。

すなわち、糖尿病の治療は、新型コロナの重症化リスク低減にも寄与する、糖尿病患者にとってとても大事なポイントになっているのです。

糖尿病や糖尿病性腎症についてさらに詳しく知りたい方は、拙著『医者が教える最強の解毒術』『日本人の9割が誤解している糖質制限』『糖尿病で死ぬ人、生きる人』などにもあたっていただき、健康長寿の実現に向けた生活の改善を今日からスタートしていただきたいと願っています。

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