いまの研修内容は需要と供給が合致していない

そんな問題点を、より具体的に解き明かしてもらおうと、2022年4月に開校するオルタナティブスクール「ヒロック初等部」(東京都世田谷区)のスクールディレクターに就任する蓑手章吾みのて しょうごさん(37)を訪ねた。

21年3月まで都内の公立小学校教員を14年務め、『自由進度学習のはじめかた』など授業実践の著書が多い蓑手さんは、SNSなどで多くの教員に支持されている。

更新時研修については、「研修内容は大学が中心にやっていることが多いので、最新の情報だろうと思う。そういった新しい教育理論を聞きたい人も一部いるかもしれないが、多くの教員は現場の話を聞きたい。つまり、需要と供給が合致していない」と問題を指摘。

続けて「研修も動画配信などにして、自由な時間に見られるようにすればいいのではないか」と提案する。さらにいえば、根本的な問題は、教員という仕事のビジョンにありそうだ。

「学級崩壊、保護者のクレーム、不登校。そういった問題があるから予防しましょう、対策立てましょうと言われて、教員は多忙になる。マイナスをゼロにすることばかりやらされるので、教師という仕事に希望がない。

明日の授業はこうやって、子どもが自ら動くような時間にしよう、みたいにゼロをプラスにする取り組みを軸にすれば、先生ぞれぞれの中に希望が生まれ、自ら学びを掴むようになると思います」(蓑手さん)

教員が抱える多忙感の正体は「希望のなさ」

蓑手さんが言うように、多忙感の正体は「希望のなさ」。ビジョンを転換すれば、先生たちも学びに主体的になれるのだ。

「実際、自ら学んでいる先生は多忙感が少ない。指導動画など、ネットで検索しただけでも有益な学びはザクザク出てきます」

研修を強いるのではなく、学びの楽しさや必要性に気づいてもらう設計をすべきだろう。

希望を持たせるには、Aさんが訴えるように人を増やすことも重要だ。しかし、目下私たちの国では教育含めどの業界も人手不足に悩まされている。各種業界で人材争奪戦ともいえる状況のなか、例えば2021年度教員採用試験の倍率は、東京都で小学校3.1倍、中学校は1.2倍とダウン傾向は変わらない。

地方も同様で、比較的待遇がよいとされる政令都市の福岡市でさえ、小学校は2.3倍(前年度2.5倍)、中学校3.6倍(前年度4.1倍)と教員人気は下降している。本格的に多忙感をなくす対策を考えるべきだろう。

「研修をやらないと質が下がると文科省は言うけれど、実施した研修の成果についてエビデンスをとっていますか? と問いたい。どれだけ質が上がったのか、良かったのか、指導スキルの向上に役立ったのか。そのためには、現場に耳を傾ける姿勢が大事だと思います」と蓑手さん。

子どもに対し傾聴しましょう。文科省は教員たちにそう促している。通達ばかりではなく、ぜひ現場の声を吸い上げ協働してほしい。

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