本当のゴールの見つけ方
例を出して説明しましょう。たとえばあなたが、「100万円で、人材が集まるアイデアを考えてください」という依頼を出して、その提案として、「100万円でSNSに広告を出しましょう。ビジュアルアイデアはこれです」というプレゼンがあったとしたらどうでしょう?
きっと、求められている課題に対して解決策を提案されているから、やり方は正解で、あとは中身のアイデア勝負だな、と考えると思います。おそらくほとんどの人がこのプレゼンの仕方が間違っているとは思わないでしょう。
ただ、これを、前章でお話しした「そもそも思考」で考えると、話が変わってきます。「そもそもこの会社は何を目指しているのか?」「そもそもこの会社にはなぜ『人が集まらない』のか」という「問い」を追求すると、この会社に眠っている、より本質的な課題と、その課題を解決して向かうべき本当のゴール(未来)が見えてきます。
まず、そもそも思考を使って、「そもそもなぜ100万円で人集めを?」という問いを始めてみましょう。すると、
「だって人が集まらないからね」
「そもそも、なぜ人を集めたいのですか?」
「事業に人が足りないし、それに若者がいないと活気が出ないしね」
「そもそもなぜ若者が必要なのですか?」
「若い人のほうが新しい企画が考えられるでしょ……」
と続いたりします。ここまで聞き出せれば「なるほど、若者を集めて新しいアイデアを出したいのですね」というゴールにたどり着けます。これが、本当のゴール設定。つまり、プレゼンの相手が本当にワクワクする未来の設定の仕方です。
この思考プロセスを経ていないと、たとえば「リタイアした人を集めましょう!」というアイデアも出てくるわけです。でもそれでは、提案先のゴールと違っているから、相手が納得するはずも、ワクワクするはずもありません。
「どうやるかではなく、なぜやるのか?」
だからプレゼンターが誠意を尽くしても、結果的にプレゼンは失敗に終わるのです。本当に向かうべきゴールを設定する秘訣は、提示された課題やゴールを安易に飲み込まず、「そもそも思考」で考え直すことです。
「そもそも思考」は、近視眼的に考えがちなプレゼンを、より手前から、より広い思考へと変えてくれます。考えるスタート地点が少し手前になるとイメージすると良いでしょう。
そうすれば、足元に隠れて見えていなかった本質的な課題が見え、本当のゴールに行き着ける道筋がわかるようになります。
では、先のやりとりを、「そもそも思考」で正しいやりとりにしてみましょう。
課題
「我社には××という課題があるんだが」
「なるほど。でも、そもそもなぜ、××の課題を解決したいのですか?」
「それを解決すれば、○○がうまくいくからだよ」
未来
「では、そもそもなぜ、○○をうまくいかせたいのですか?」
「それは、○○がうまくいけば、将来的に会社がうまくいくからだよ」
「うまくいったとして、そもそも会社は、何を目指しているのですか?」
「そうだね、将来的には☆☆になると良いね」
「では、その☆☆というゴールに向けた、課題解決をしましょう」
実現案
「でも、何をやれば良いのかわからないよ」
「あ、それなら、■■をやれば良いと思いますよ」
「なるほど。でも、どうやるの?」
「はい、こうやってできます」
「お、それは良いね」
これで、「課題→未来→実現案」となり、しっかりとゴールに向かったプレゼンとなります。「そもそも思考」はこのように、本質的な課題とゴールを「問いかけ」で見つける、いたってカンタンな方法です。
なにしろ、そのとっかかりは、普段使っている「そもそも」と「なぜ?」だけ。「そもそも」で、思考をいったん手前に戻し、「なぜ?」という疑問で本質を見極めるのです。まさに、「どうやるかではなく、なぜやるのか?」を見極めることで、本質的な解決に向かう思考法です。
「そもそも思考」を始めると、普段の仕事にありがちな「とりあえず考えよう」という癖がなくなり、本質的なゴールに向かう目を持つことができます。