難しい言葉や難解なロジックを理解するのは骨が折れる。しかし、相手に伝えるためのプレゼンの場でも、しばしばそれらを見かけることがある。クリエイティブディレクターの小西利行氏は「難しい言葉を使う人は『頭が良いよう』に見せている。難しいことを誰もがわかるカンタンな内容にするほうが頭の良いことで、数百倍は困難だ」という――。

※本稿は、小西利行『プレゼン思考』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

クエスチョンマークがたくさん浮かんでいる女性
写真=iStock.com/fotosipsak
※写真はイメージです

「ムズカシクする人はアホ。カンタンにする人が天才」

プレゼンの基本とは何でしょう?

それは人の心を動かすことです。そして、そのためには難しいことをカンタンにして話したり、相手が興味を持つように話すことが必要です。

思いが相手に届き、共感されるプレゼンができれば、ビジネスも人生もうまくいきます。そのプレゼンの核にあるのが、「人の心を動かす」というシンプルな目的なのです。

僕は、プレゼンが苦手だった若い頃、その目的を意識するだけで、相手が共感する提案ができるようになりました。そして、そのときに生まれた僕の指針が、「伝える」より「伝わる」。

自分は伝えたから後は知らない、という責任逃れをやめ、相手にしっかりと伝わるまで諦めずに提案をする、という意識改革が、すべてを変えたのです。

ちなみにその頃から、僕は、「ムズカシクする人はアホ。カンタンにする人が天才」だと思うようになりました。世の中には難しい言葉や難解なロジックを使って「頭が良いように見せる」人もいますが、本当は、難しいことを誰もがわかるカンタンな内容にするほうが、頭の良いことだし、数百倍は困難だと思います。

たくさんの人を幸せにするために

でも、僕はその困難なほうへ向かうようにしたのです。なぜなら、そうすることで、たくさんの人に買ってもらい、たくさんの人に愛してもらい、そしてたくさんの人を幸せにすることができるからです。

小西利行『プレゼン思考』(かんき出版)
小西利行『プレゼン思考』(かんき出版)

商品や思いをより多くの人に共感してもらうためには、まず、より多くの人に伝わることが大切です。そして、そのためにはカンタンであることが必須です。だから僕は、難しい話をカンタンにして、誰もが共感できることを目指すのです。

難解なことの面白さや、不可解なことの楽しさもわかったうえで、それでも、できるだけカンタンに、わかりやすく、興味がわくように書き換える。それが僕のやり方であり、本書のベースになっている考え方です。

ちなみに、僕が徹底してそこにこだわるのは、それこそが、プレゼンの本質だと思っているからです。僕がプレゼンで目指すのは、提案内容が相手に深く伝わり、その人たちが「自分ごと」として考えるきっかけとなり、さらに周りの人に話したくなること。

そのためには、カンタンでわかりやすいことが必須というわけです。そしてその意識は、これからの時代にとても大切なことだと思うのです。