繰り返し、繰り返し聞く

僕は、クライアントや上司などからオリエンを聞く場でも、報告を聞く場でも、「そもそも、皆さんは何を目指していますか?」という質問をします。さらに「そもそもなぜその商品をつくったのか?」「そもそもその商品は人を幸せにするか?」などを繰り返し、繰り返し聞きます。

相手はおそらく「邪魔くさいな」と思っているでしょうし、「そんなことを聞いて意味あるの?」という反応もあります。でも僕はひるまず聞き続けます。なぜならこの問いこそが本質的な課題とゴールを見つけ出す方法であり、後で説明する「ビジョン」の設定にとって大切な考え方だからです。

そして、この邪魔くさい回り道が、結果的には成功への最短ルートを見つける方法になるのです。

安易なゴールは蜜の味がします。先人がつくったコースを歩いたり、上司から言われたように走ったりすれば責任が発生しないし、何よりラクです。きっと多くの人がその蜜に惹かれ、その道を行きたいと思うでしょう。

でも、今は一歩先すら予測できない時代。安易な思考からは何も生まれないことは明白です。

まさに、「そもそも私たちはなぜ存在するのか?」「そもそも私たちは何を目指すのか?」「そもそもこの商品でどんな地球をつくるのか?」。そんな哲学のような自問自答を繰り返すことでしか、本当のゴールを見つけられない時代になったのです。

「未来」がないと、提案として不十分

プレゼンと言えば「企業の課題を解決するためにアイデアを提案するもの」と思われがちですが、実は、それだと半分しか正解ではありません。そこで本稿では、もう半分の答えをしっかり意識できるようにお話ししていきたいと思います。

まず、企業の課題解決をするプレゼンについて考えましょう。たとえば、一般的なプレゼンのやりとりはこういうものだと思います。

「我社には××という課題があるんだが」
「では、その課題解決をしましょう」
「でも、何をやれば良いのかわからないよ」
「あ、それなら、■■をやれば良いと思いますよ」
「なるほど。でも、どうやるの?」
「はい、こうやってできます」
「お、それは良いね」

このやりとりには「課題設定」「戦略提案」「戦術提案」の3つが入っていますし、一見するとこれで良いと思えるのですが、実はこのやり方では不十分な答えしか出ていません。

なぜならここには、必勝方程式の「課題」「実現案」だけで、「未来」の提示がないからです。未来がないとゴールがないプレゼンになり、一本のロープが引けません。つまり、未来ヘ向けた課題解決にならないので、提案として不十分というわけです。

向かうべき本質的なゴール(未来)がわからなければ、提示された案そのものが良いのか悪いのかも判断できません。さらに、間違った答えを提案してしまう可能性も高くなるのです。