「御用聞き営業」から「頼りになる相談役」へ

もし、質問をして、相手の要望を分解して掘り下げれば、

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「マネージャー層の、会社に対する忠誠心が、創業期はめちゃくちゃ強かったのに、社員が増えることでだんだん弱まってきている。ここを変えたい」
「中堅クラスの営業パーソンたちの、『自社の商品でお客さまに貢献しよう』『世の中のために尽くそう』という思いが、最近弱まってきている。それを思い出させたい」
「若手営業パーソンたちのアポ獲得率が低い。クロージングのパーセンテージが、昨年より3割も落ちている。なので、アポ取りとクロージング率を上げたい」

そんな具体的なニーズがわかるはずです。

「営業力が落ちているんです」と相談してきた研修の発注者に、

「ありがとうございます。『営業力が落ちている』とは、成約の件数が落ちているんですか? それともクロージング率ですか? 売上の金額ですか? 利益率ですか?」

って聞くと、それだけで、相手がドキッとすることもあります。

「調べてから、また相談します」となって、発注担当者の成長にもつながります。

そうして、「調べた結果、受注件数が落ちていました」とわかれば、今度は、「件数を上げるために何が必要か?」「行動量が少ないのか?」「狙い先リストが少ないのか、あるいは弱いのか?」など、さらに「分解」して一緒に考えてみる。

それで、もしも「リストが少ない、弱い」ということが営業力低下の原因なら、「ウチで研修をしなくても、リストを充実させてくれるサービス会社がありますから」などと、別の解決策を提案できるかもしれません。

それはもう、ただの「御用聞き営業」を超えた、「頼りになる相談役」ですよね。

できる人はそれを知っていて、分解して深掘りすることで信頼を得ているのです。

「幸せになりたい」を分解することで幸せになれる

「幸せになりたい、それはそうですよね、ちなみに、○○さんの考える『幸せ』というのは、健康的な幸せですか? 経済的な幸せですか? それとも仕事についての幸せなのか、人間関係の幸せなのか。強いて言えばどれでしょう?」
「あー、そう言われると、人間関係ですかね」
「ありがとうございます。ちなみに人間関係で言うと、上司、部下、同僚など、職場における人間関係か、それとも両親、奥さん、お子さんなど、家庭における人間関係か。どちらなんでしょう?」
「その意味では、職場ですね」

分解することで、相手はとりわけ職場における人間関係に、悩みを抱えていることがわかりました。

さらに具体化するために、分解を続けます。

「となると、先ほどお伝えしたように、上司、部下、同僚、どれなんでしょう?」「上司です」
「その上司というのは……? 差し支えなければ教えてもらえますか?」
「部長ですね」
「ということは、今、○○さんにとっての幸福度に一番インパクトを持っているのは、部長ということでよろしいですか?」
「そうですね」

こうなると、その人にとっての今の「幸せになりたい」は、「部長との人間関係のストレスをなくしたい」ということになります。

分解するように質問することで、曖昧だった言葉の正体が明確になるわけです。