しかし、「給料泥棒」と言われて、反省して「そう言われないように働こう」などと思う人は、まずいないでしょう。そんなことを言ってきた相手を嫌いになったり、悪意を持ってしまう場合の方が多いと思います。ですから、絶妙に相手に合う例えを思いついたとしても、グッとこらえて使わないようにしましょう。
ネガティブな言葉は相手に届きやすい
人を叱ったり怒ったりしているときに、相手があまりにも平気な顔をしていたり、こちらの言葉が響いていないようだと、「この人には普通に言っても効き目がないな」と思い、つい≪悪意の比喩≫というトゲを混ぜてしまいがちです。
でも、相手は本当は最初からすごく傷ついていて、必死でそれを表情に出さないようにしていたのかもしれません。そこにさらにひどい比喩で追い打ちをかけられては、深刻なダメージを与えてしまうこともあり得ます。
実際、なかなかパソコンの操作を覚えられなかった中年男性が、同年代の親戚から「パソコンくらい小学生でも覚えられる」と言われ、それがきっかけでアルコール依存症になってしまったという例もあります。
言葉で思いを伝えようとしても、思っていることの半分も伝えられないものです。しかし、人はネガティブな情報に注意が向きやすいという性質を持っているため、ネガティブなインパクトだけは、10が20になって相手に伝わってしまいます。
相手を注意したり文句を言ったりするときには、そのつもりで言葉の配慮や加減をすることが大切だと思います。
AをほめるためにBを否定しない
◯ Aはとてもいいね
「Aをほめたい、良さを伝えたい」と思うときに、ついやってしまいがちなのが、別のものBと比較し、Bをけなしてしまう言い方です。
考え方や好みは人それぞれであり、当然Bが好きな人もいます。なので、こういう言い方をしてしまうとBが好きな人を傷つけてしまったり、「この人とは話が合わないな」と思われてしまう可能性もあります。
一番の目的はAをほめることであり、Bをけなすのはそのための補強に過ぎません。それなのに、Bのことで誰かを不快にさせたり、人間関係に問題が起きてしまっては、こんなにもったいないことはありません。