「好きすぎる」=「マニアック」

僕のゲーム以外の趣味は映画なのですが、これも作り手にはなれないと思っています。というのも、映画を観ていて、「僕だったらこうしたほうがおもしろいのに」と思うものは、世間ではウケないのだと感じるからです。

特に、ハッピーエンドではない映画が僕は好きなのですが、バッドエンドで大成功した映画はほとんどありません。その時点で、僕が映画を作る資格はないわけです。

2016年の『シン・ゴジラ』を観ていて、非常にもったいないなと思ったことがあるのですが、それは「海外の人にはウケないだろうな」ということです。

怪獣映画といえばアクションものとして世界で売れる可能性があるわけですが、『シン・ゴジラ』は会議の映画なので、日本人にはウケるけれど海外の評判はあまりよくないです。

「会議が長すぎて物事が思いどおりに進まない」というのは海外ではピンときません。多くの国では、だらだらと話していても、「うるさい!」とか言って相手を殴って、会議室を出ていくような主人公を求めてしまうわけです。

まあ、「日本のアイドルが出ている映画」みたいに、最初から海外を狙っていない映画ではどうでもいいのですが、庵野秀明さんは海外でも知られているのでもったいないなと思ったんですよね。

そんなふうにエンターテインメント分析をするのは好きですが、そういう意味では、僕は作りたいものを作れないと諦めている部分があります。

クリエーターとして、「作りたいものを作る」という感じだと絶対に失敗しそうで、逆に、「そつのないものを作ってお金儲けする」という方向性なら、できそうな気がします。

でも、別にそこまでして映画を作りたいわけではありません。

世の中には、映画が好きだからなんとしてでも映画に関わる仕事がしたい、という人も多いでしょうから、そういう人は、商業的な「割り切り」をちゃんと受け入れるようにしたほうがいいと思います。

最低賃金は上がるほうがいいのか

そうした仕事観に関連するのが、「給料」のことだと思います。ここでは最低賃金について話をしてみようと思います。

アメリカのカリフォルニア州で、最低賃金が15ドルになったことがありましたが、日本でも、「最低賃金を上げよう!」という動きが見られます。

写真=iStock.com/gremlin
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そもそも、最低賃金が上がるとトクをするのだと誤解をしているアルバイトの人が多くいます。

最低賃金が高くなると、「自分の時給も高くなってラッキーだ」と想像しているかもしれませんが、やはり世の中に打ち出の小槌はありません。

たとえば、都内のマクドナルドの時給が1000円くらいですが、それが1500円になった場合を考えてみましょう。

そこには2つの可能性があります。

ひとつは、人件費の分だけマクドナルドの売り上げが伸びて、人件費を賄うことができるパターン。

もうひとつは、人件費の分ほど売り上げが伸びなくて、マクドナルドが閉店して、アルバイトが失業するパターンです。