“やせすぎ”の影響知っていますか?

やせすぎの子が増えている。肥満の悪影響は広く知られているが、やせすぎがもたらす問題は見過ごされがちだと細川さんは指摘する。

写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです

「たとえば、骨量は20歳ごろにピークに達します。一生のうちで最も多い骨量をピークボーンマス(最大骨量)と言いますが、やせすぎているとピークボーンマスの頂点が低くなってしまう。当然、身長もあまり伸びません。成長期に強い骨を作れないと、将来、骨折しやすかったり、骨粗しょう症のリスクが上がったりします」

また、女の子の場合は初経が遅れ、さらに婦人科の病気のリスクが上がる恐れもあるそうだ。

やせすぎが増えている背景には親世代の影響もあるという。

「背景のひとつに、親世代の“やせているのがいい”というボディーイメージが挙げられます。たとえば子供をほめるとき、『あの子はスリムでいいね』『細くてスタイルがいい』なんて口にしていませんか? やせているほうが美しいという価値観は、日々の何げない一言で子供にすりこまれていきます」

親自身も言動に注意したい。

わが子が栄養不足にならないために

その1 朝ごはん「成績を上げたいなら、パンよりごはん」

東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が行った「朝食と脳の働き」の研究調査によると、朝ごはんにお米を食べている子供の知能指数は平均で104点だったのに対し、パンを食べている子供の平均は100点だったという。さらにMRI調査によって、ごはん食の子供たちはパン食の子供たちに比べて、神経伝達物質が集まる灰白質や記憶をつかさどる海馬の容積が大きいことがわかった。

細川さんは、この結果を次のように分析する。

「米の栄養成分がパンより優れているということではなくて、米が主食の献立のほうが脳にいい栄養をとりやすい、ということだと考えられます。まず、米が主食の和食はノリや納豆やみそ汁の具など、洋食に比べて食物繊維をとりやすい。食物繊維には、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。糖は脳のエネルギー源ですが、血糖値は高すぎても低すぎてもよくない。乱れないことが望ましいのです。一日の最初に食物繊維が豊富な食事をとると、昼食、夕食で多少の暴食をしても血糖値の乱高下が起きにくくなります」

ごはん食のメリットはほかにも。

「和食の定番のおかずである焼きジャケやサバのみそ煮には、脳の神経伝達物質の働きをよくするDHAやEPAが豊富。大豆や卵には、記憶に関係するレシチンが含まれます。一方、パン食によく登場するソーセージやハムには、体に必要なタンパク質が豊富ですが、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸なども多いですね。これらの脂肪が多い食事をすると集中力が低下するという研究報告があります」

子供の脳のことを考えれば、朝食はごはん食に軍配が上がる。ちなみに、「プレジデントFamily」が実施した東大生へのアンケートでも、小学生時代にごはんなどの和食だった人は49.4%、パンなどの洋食だった人は34.9%とごはん派のほうが多かった。

また、朝ごはんのおかずの品数が多いほど成績が伸びる、家族で食卓を囲む家庭の子ほど学習効果が上がる、という研究も。

「ただ、そうはいっても品数の多い朝食を作るのは大変ですよね。栄養が満たされればOKと考えて、便利なアイテムをどんどん活用しましょう。ごはんとみそ汁さえ作れば、あとはひじきやきんぴらなどのお総菜やミールキット、納豆やしらす、サケフレークなどを活用するのもおすすめです。それにお母さんだけが調理の負担を背負う必要はないですよね。お父さんや子供だって朝ごはん作りの戦力になります」

朝ごはんをしっかり食べるためには、十分な睡眠をとることも重要。起きた瞬間にだるさや疲れが残っているようでは、当然ながら食欲はわかない。

「夕食が遅くなるときは、油分控えめのあっさり系に。たとえばバターは消化に最長12時間かかります。夜遅くにこってりしたものを食べると、翌朝になっても胃腸は前日の夕食を消化中。脳や体への影響が大きい朝食を充実させるためには、夜は“あっさり”が正解です」

●脳の灰白質比の平均値

※灰白質とは脳の中の神経細胞が多く存在する場所

【朝ごはん】
【幼稚園~小学生】
お米52.5
パン51.5
【中学生~大学生】
お米53.5
パン50.5

東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授「朝食と脳の働き」の研究調査より