都議の育休取得制度に対して、自民の31人が無回答

今回の都議選候補者に対してはメディア各社もアンケートをしていて、それを使った朝日新聞と津田塾大学総合政策学部による当選者の分析が興味深い。

ジェンダーに関する部分では、選択的夫婦別姓制度の導入について、反対と答えていた15人が全員落選し、当選者のうち93人(73%)が賛成だった。ただ、当選者のうち無回答が34人にいて、そのうち31人は自民党だったという。確かに候補者全員のアンケートの回答をみると、夫婦別姓について回答している自民党議員は数人で、「回答なし」が目立っていた。

都議の育休取得制度に対しても当選者のうち賛成は90人(71%)と、反対2人(2%)と大きな差がついた。反対は自民と立憲だったが、この質問にも自民の31人が無回答だったという。そもそもジェンダーや子育てに対する意識が問われる質問に対して「無回答」では、こういった政策を重視して投票したい有権者には判断すらできない。

今回、自民党はかろうじて第1党に返り咲いたものの、当初目標としていた自公で過半数、自民単独で50議席には遠く及ばない33議席にとどまった。その要因として大きいのは、もちろんコロナ対策や五輪対応への批判だろう。だが、メディア各社が事前の候補者アンケートにわざわざ夫婦別姓に関する質問項目を入れたことからもわかるように、ジェンダーに関する考え方は、経済政策などと並んで、有権者が投票先を決める際に必要な要素になっている。ジェンダー不平等を積極的に解消しようという姿勢の見えない自民党には「ジェンダー逆風」が吹いたと言えるのではないか。

公平な機会を得るには「3割超」が必要

今回の都議選では、女性議員が3割を超えたことが大きな話題となったが、ではこの3割という数字にはどんな意味があるのだろうか。集団の中で存在を無視できないグループとなるには一定の数が必要で、その分岐点を超えたグループはクリティカルマスと呼ばれる。ハーバード大学の研究では、その数が35%を超えると初めて組織の中で公平な機会が得られるとされている。

都議選の品川区選挙区に無所属で立候補し、2位当選した森澤恭子さん(写真提供=森澤恭子)

前回2017年の都議選では、小池都知事率いる都民ファースト旋風もあり、女性議員は36人当選し、すでに3割近くの議席は女性で占められていた。

先の森澤さんは都民ファへの追い風を受けて当選したひとりだが(その後離党)、明らかに女性が3割近くいることによる議会内の変化を感じたという。例えば都議会の委員会でも、委員長が「子育て中の議員もいるから、あまり長くならないようにしましょう」と発言するなど、一定の配慮が見られるようになった。

「実際、まだ時間が大幅に短縮されるところまでには至ってないのですが、働き方に対して意識されるようになっていると感じます」(森澤さん)