16~24歳ドライバーのほうが高齢者より多く人をひき殺している

警察庁の「高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議の配布資料」(2016年)によれば、運転者が起こす死亡事故のパターンにおいて、「車両単独事故」(工作物などに衝突して自分が亡くなる事故)は75歳以上が40%、75歳未満が23%だった。一方、人をはね殺す「人対車両」の事故は75歳以上が19%で、75歳未満の38%の半分だ。

必ずしも池袋の事故のようなケースは多くはないとはいえ、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故は75歳未満と比べ、75歳以上のほうが多く、高齢者は免許を返納すべきだという気持ちは理解できる。

しかしながら、危ないから(人をはねたりしやすいから)運転すべきでないという考え方でいけば、16~24歳までのほうが免許保有者10万人当たりで人をひき殺している数は多い。高齢者に免許返納を求めるなら、24歳までは免許を取るなというアナウンスもしなければ年齢差別ということになるかもしれない。

「運転をやめた人」は「運転を続けた人」に比べ“要介護リスク”2倍

それ以上に私が問題だと思うのは、高齢者の免許返納は、高齢者の事故を減らす可能性がある一方で、副作用が大きいということだ。

東京・池袋で暴走した車にはねられ母子が死亡した事故現場で、実況見分に立ち会う旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(左)=2019年6月13日、東京都豊島区(写真=時事通信フォト)

筑波大学の市川政雄教授らのチームが、愛知県の4市町に住む65歳以上の高齢者のうち、2006年~2007年時点で要介護の認定を受けておらず、運転をしている2844人を調査した。

この2844人に対し、2010年に運転を続けているか改めて尋ね、「運転を続けた人」と「運転をやめた人」に分け、その後6年間にどれだけの人が要介護認定を受けたかを比較したところ、2010年時点で「運転をやめた人」は「運転を続けた人」に比べて、“要介護となるリスク”が2.09倍に上ることがわかったというのだ。

そのほか、国立長寿医療研究センターが65歳以上を対象に行った調査では、運転をやめた人が要介護状態に陥るリスクは、運転を続けている人の約8倍という結果が出ている。

これは、とくに地方では免許を返納すると外出の機会が大幅に減るため、と考えられている。実は、コロナ自粛でも要介護者数は増えることが予想されている。