中国のハイテク企業規制強化が、アメリカの利益になる
中国ではIT企業に対する締め付けが強まっている。他方バイデン政権がH-1Bビザの緩和措置をとれば、アメリカに残る中国人の専門家が増え、アメリカの新技術開発能力は飛躍的に向上するだろう。
もともとIT革命は、IC(インディアン・アンド・チャイニーズ)によって実現したといわれた。アメリカの強さは、ICを認めたことにある。
トランプ前大統領による排他政策からバイデン政権が脱却できれば、その意味はきわめて大きい。トランプ政権の反ハイテク政策は、結局は中国の利益になる場合が多かった。今度は逆に、中国におけるハイテク企業規制強化が、アメリカの利益になる可能性がある。
他方において、アメリカが中国系企業を排除しようとする政策は続くだろう。とりわけ、ファーウェイに対する排除措置は続く可能性が高い。
中国系IT企業であるTikTokやZoomなどに対する対応がどう変わるのか、予測できない。ただし、TikTokなどの特定の中国企業が安全保障上のリスクをもたらすとの考え方は、バイデン氏もトランプ氏と同じように持っているといわれる。
デジタルドルの発行が促進される可能性
今後、中国ではハイテク企業への規制がいっそう強まり、アメリカではハイテク敵対視政策が後退する可能性が強い。
すると、米中デジタル戦争は、大きな転換点を迎えることになるかもしれない。これは、中央銀行によるデジタル通貨発行にも影響する可能性がある。
中国のデジタル人民元計画は着々と進んでおり、2022年に実用化されることはほぼ間違いない。一方、これまで、アメリカ財務省もアメリカ連邦準備理事会(FRB)も、中央銀行デジタル通貨に対して異常なほど消極的だった。
FRBのパウエル議長は、2020年10月19日、国際通貨基金(IMF)が開催した国際送金に関するパネルディスカッションで、中央銀行デジタル通貨の発行について慎重な姿勢を示した。
これは、共和党内での反対意見が強かったためと思われる。共和党では民間主体の電子決済を後押しする意見が強いのに対して、民主党にはCBDCの推進論がある。すると、バイデン政権の成立により、デジタルドルをめぐる状況が変化する可能性もある。