父親の国外追放という逆境スタートからの成功

彼の血統は初代国王の直系の孫であり名門であることは間違いないのですが、アルワリード王子の父親であるタラル王子は王制の国としては当時革新的過ぎるリベラルに傾倒して一部の王族を巻き込んで政治運動を行った結果、左派化していると批判され、王位継承権を放棄させられ、ついには国外に追放されました(その後、許されましたが)。

この「自由王子運動」とも呼ばれる王制への挑戦とも言える運動を仕切っていたタラル王子は「レッド・プリンス」と呼ばれていました。当時中東諸国では王制がそもそもリベラル的な思想とは水と油の関係性にあるわけですから、王族の中からこういう運動が生まれるのは珍しいことでした。

しかも、このタラル王子は初代国王の直系にあたる家系であったので、王位継承権の上位に位置する人物でもありました。

とはいえ、そういった形で、王室において騒動を起こした人物でもあることから王位継承権を放棄させられたため、タラル王子の息子であるアルワリード王子は王族として政府の重職につくことができませんでした。

そこでアルワリード王子はどうしたかと言うと、サウード家直系の王族という立場を上手に使って外資企業などがサウジアラビアに進出する提携先となる、ローンを組んで有望なプロジェクトに出資する、など有能なビジネスマンとして活躍しました。

王位継承権はないものの、血筋としては初代建国の王の孫にあたるわけですから、その力をある程度は行使することはできたのです。

その結果、建設業や不動産業など事業をどんどん拡大していき、「アラブのウォーレン・バフェット」と呼ばれるまでの投資家になったのです。

政府や王族と上手く付き合わなければなかなかビジネスで成功できない

彼の所有するキングダムホールディング・カンパニーはサウジアラビアにおける持ち株会社の中で最大規模を誇る会社です。

この会社は投資事業がメインで、主な投資先はアマゾン、アップル、コカ・コーラ、マーベル・コミックなど、世界の錚々そうそうたる企業に、しかもいくつかは大株主と言われる比率で投資しています。

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そして、その90%以上をアルワリード王子の一族が保有しているという、会社を個人や一族で持っているという中東ではよくある形の資本構成になっています。こうしたキングダムホールディング・カンパニーのように、王族が経営している会社が大小合わせて存在しているのです。

これらの会社の時価総額、数兆円、数千億円がそのまま彼らの資産ということになります。アブドゥル・ラティフ・ジャミール、そしてビン・ラディンやアルシャヤもすべて人名や家族名であり、そのことから家族や一族で経営されていることがよくわかります。