なし崩しで有観客開催に突き進むとみられる

多くの専門家が感染の再爆発を懸念する。この傾向が続くと、7月23日のオリンピック開会式の頃には1日あたりの新規感染者が1000人を再度突破するという専門家の試算も出ている。5者協議では、7月11日までの予定であるまん延防止等重点措置が12日以降も適用されたり、再度、緊急事態宣言が出された場合には、「無観客も含めた対応を基本とする」との方針も確認された。

逆に言えば、11日で重点措置さえ外してしまえば、有観客開催は止まらないということだ。措置を継続するか宣言を再発出するかどうかは、「新規感染者が1000人を超えた場合」といった明確な数値ではなく、政治的な判断の余地が残る。

つまり、なし崩しで有観客での開催に突き進むとみていて間違いないだろう。11日で重点措置が解除されれば、飲食店などの営業時間も一気に延びる。オリンピックは開催していて時短要請や酒類提供の規制を求めるのは無理がある。飲食店の我慢も限界に達している。

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最悪のシナリオは開会式直前の感染爆発

最悪のシナリオは、開会式の直前である7月20日あたりから感染爆発が深刻になるケースだ。政府も組織委員会もブレーキを踏むのに躊躇し、そのまま突き進まざるを得ないだろう。大会期間中にまん延防止等重点措置を再度出したとしても、飲食店への規制は難しく、要請したとしても受け入れる店がどれだけ出るか分からない。政府の「身勝手な決定の結果」だという認識が広がれば、誰も政府の言うことを聞かなくなる。

ここで、ワクチンがどの程度きくかがポイントになる。菅首相の「賭け」通り、重傷者が増えなければ、人流が増加しても感染者が増えても、医療は逼迫しない。だが、今後感染拡大が懸念される変異型インド株(デルタ株)にワクチンがどの程度有効かは未知数だ。

イギリスではワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、6月に入ってデルタ株が急拡大、ロックダウンの延長を決めた。人口の6割が1回目のワクチン接種を終えているにもかかわらず、感染拡大しているのだ。最悪の場合、オリンピック関連の人流増加によってデルタ株が日本でも広がり、感染拡大に歯止めがかからなくなる可能性がある。さらにオリンピック期間中ということで緊急事態宣言の発出が遅れれば、経済活動のブレーキを踏むのも遅れることになりかねない。

ロックダウンになれば、日本経済は壊滅的なマイナス成長に直面

その代償はこれまでの緊急事態宣言時よりも大きくなるだろう。感染拡大を止めるために、日本でもロックダウンすることになりかねない。そうなれば、経済への影響は深刻だ。日本のGDP成長率は2021年1~3月期に再びマイナスに転落した。米国などがプラス成長を続けているのと対照的で、ワクチン接種の遅れが影を落とした。3回目の緊急事態宣言の影響で、4~6月期もマイナスが続く可能性がある。

オリンピックでプラス成長が期待されたものの、海外からの観客がゼロになったうえ、国内も1万人上限となったことで、経済効果は予想を大きく下回り、限定的になる。むしろその後にロックダウンがやってきたとしたら、日本経済は壊滅的なマイナス成長に直面することになるだろう。そうなれば、非正規雇用を中心に人員整理が本格化するだけではなく、航空業界や旅行業界、百貨店、外食産業といった企業で、経営に行き詰まるところが出てくることになりかねない。

菅首相の「賭け」が当たれば、オリンピックもパラリンピックも無事終了。ワクチンの効果から感染者が減少。水際対策の徹底もありデルタ株は日本では流行せずに済む。菅内閣の支持率も好転し、秋に行われる総選挙でも自民党が勝利、菅内閣が継続する。首相はそんなシナリオを描いているのだろう。果たして、これから3カ月、日本はどうなっていくのか。日本の将来を大きく左右する分岐点になりそうだ。

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