83%が「感染が拡大する不安を感じる」

案の定、東京オリンピックの「有観客開催」が決まった。6月21日に開いた組織委員会と政府、東京都、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)の「5者会談」で、会場の収容定員の50%以内で、1万人を上限とすることを原則に観客を入れて開催することを決めた。

東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議に臨む、大会組織委員会の橋本聖子会長(左)、丸川珠代五輪担当相(右)。
写真=日刊スポーツ/アフロ
東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議に臨む、大会組織委員会の橋本聖子会長(左)、丸川珠代五輪担当相(右)。

新型コロナウイルス感染者の再拡大が懸念される中で、前日の6月20日をもって沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を解除。さらにそれに先立つ16日には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を解除した場合に、大型スポーツイベントの収容上限を1万人とすることを決めていた。その段階では「オリンピックとは関係ない」としていたが、結局、すべては「オリンピックありき」で落とし所が準備されていたことが明らかになった。

政府分科会の尾身茂会長らが出した「無観客が望ましい」とする提言や、世論調査などの声も無視された。6月19~20日に実施された朝日新聞の世論調査では、オリンピックを開催する場合、「観客なしで行うべきだ」が53%と、「観客数を制限して行うべきだ」の42%を上回っていた。開催することで、新型コロナの「感染が拡大する不安を感じますか」という問いには83%が「感じる」(「感じない」は14%)と答えていた。

菅義偉首相は「安全・安心な大会を実現する」と繰り返してきたが、毎日新聞の調査(6月19日実施)での「安全、安心な形で開催できると思うか」という問いには、64%が「できるとは思わない」と答え、「できると思う」の20%を大きく上回った。

エビデンスを示さずに有観客開催を決めた

これほどまでに国民の間に不安が広がり、中止を求める声も一定数いる中で、なぜ「有観客開催」に踏み切ったのか。結局、最後まで菅首相はその「根拠」いわば「エビデンス」を示すことなく、ムードで押し切った。なぜ、中止にできないのか、無観客ではいけないのか、結局、国民に率直に語りかけることはしなかった。

「世論は気まぐれなので、オリンピックが始まれば、皆開催して良かったという意見に変わりますよ」と自民党のベテラン議員はつぶやく。「そこに菅さんは賭けたのでしょう」

「賭け」とはどういうことか。6月に入って新型コロナワクチンの接種が一気に加速した。遅々として進まなかった自治体任せをやめ、自衛隊を使った大規模接種だけでなく職域接種にも乗り出した。