賞味期限切れの食品は、品質が緩やかに劣化する
まずは念のため、基本情報を押さえておくと、「消費期限」は弁当や調理パン、そうざい、生菓子類、食肉、生めん類など品質が急速に劣化しやすい食品に付けられるもので、「食べても安全な期限」です。したがって、期限を過ぎたら食べない方がよいのです。
一方、「賞味期限」は、定められた方法により保存した場合に「おいしく食べられる期限」。菓子やインスタントラーメン、缶詰、レトルト食品など、品質劣化が比較的遅いさまざまな加工食品に付けられています。
食品ロス削減を呼びかけながら廃棄
賞味期限切れ食品の寄付について、消費者庁食品ロス削減推進室の堀部敦子課長補佐は、「なにより安全を守らなければならない、と考えました」と話し始めました。
消費者庁の検討のきっかけは食品ロス対策。中央府省庁には災害用備蓄食品計100万食が保管されており、賞味期限切れに伴って毎年、20万食が入れ替えられます。
ところが、20万食はこれまで多くが廃棄されてきました。消費者庁は「賞味期限切れは、食べられる。食品ロスを削減しましょう」と旗を振っているのに、自分たちは捨てていたのです。
もったいないのですが、事情があります。備蓄食品は、国のお金で購入されており、物品管理法の下、賞味期限が切れるまでは大切な国の財産です。そのため、期限に余裕がある段階でだれかに引き渡すのは難しいのです。民間企業だと、賞味期限が十分残っている間に寄付しますが、国はそれができません。
従来は、そのまま不要品となり、職員が食べる努力をしますが大半が廃棄されていました。2019年度からは、一部の組織で民間への「売払い」が始まりました。賞味期限にぎりぎりまで近づいたところで、売払いの公告が出され、最高価格をつけた入札者が購入し、格安スーパーなどに出回ります。
でも、売払い不成立も目立ちました。公告から入札、落札者が決まり引き渡しまでに約1カ月かかることもあり、その間に賞味期限切れとなるものも。そのため、公告の際に賞味期限までの残存期間が2カ月を切ると、ほとんど落札されません。
結局は、大半が廃棄されていました。廃棄にもお金がかかります。たとえば缶詰は廃棄するのに1kgあたり50~100円……。