90%以上売上が落ちたならば、まともな精神状態でいられなくなるのは当然です。倒産という言葉も頭によぎるでしょう。寺村社長にそのタイミングで船井総研の主催するセミナーにご参加いただき、ご支援をさせていただくことになりました。

ティラドルチェの寺村社長(写真提供=社長online)

人の来ない観光地のお店でも、宅配ならば商圏を広くできる、デリバリーで売れる商材を考えることから始めました。デリバリーにどのような需要があるか、価格帯はどのくらいがいいのかといったことを、サポートさせていただきました。

「自分たちがやろうと思っていたことと、市場が求めていることのギャップは大きいとわかりました」。寺村社長はそう語っています。

「緊急事態宣言が出て、お店の営業ができなくなったことで、周りの店はどこもテイクアウト販売を開始しました。そのとき売れていたのが398円、400円、500円といった価格帯の弁当でした。ですから、自分たちもそのくらいの価格でいくのがいいかと漠然と考えていましたが、後々、売上のボリュームが上がっていっても、それでは厳しいとわかりました。400円、500円のものを売っても利益は微々たるもので、『よそよりもっと安く』の価格競争に巻き込まれて、お店同士のつぶし合いになるだけでしたから」

1000円、1500円でも売れるデリバリー商品をつくる

飲食店と、弁当などの「中食」では価格に対する考え方がまったく違い、取るべき戦略も違うものです。なお、中食と一言でいっても種類があり、厳密には「テイクアウト」と「デリバリー」があります。その違いは以下です。

デリバリー:企業の御用始め、御用納めなど「ハレの日」用途がある商品。高価格も成り立つ
テイクアウト:用途がない日常のための商品。専門性を持たないと値段の高いものは成り立ちにくい

中食で売上、利益を出しているところは、デリバリーの商品を開発し、1000円、1500円といった高価格で勝負しています。

「せっかくの人気飲食店が持つ料理の技術を盛り込んで、店舗で出している商品の延長でテイクアウトもやりながら、1000円、1500円でも売れるデリバリーの商品を作っていきましょう」とアドバイスさせていただきました。

そして今までの支援で成功した事例をお伝えしながら、その後数カ月後の動き、道筋を共有し、再建に向けて歩み始めたのです。

壁になった「デリバリーへの意識の切り替え」

しかし、高価格のしっかりしたデリバリー商品の開発は、難航を極めました。試作品を作っては変更を重ね、できたと思ったら売れるものになっていない、と改良の繰り返しです。

売れる商品のセオリーを、ティラドルチェの店でどう実現できるかに落とし込んでいくのですが、その結果出来上がったものが、どうも思っていたイメージと違う。それは味以外でもそうで、たとえば、おいしそうでも作るのにすごい時間がかかりオペレーションが回らないとか、この包材ではとても数を多く売れないから作り直し、を繰り返しました。