「改良前の試作品」を出す

しかも、それが実を結ぶか否かは、すべて受け手に届いて、使われてからしかわからないものです。その環境に、Makuakeは違うルートを用意しているのだと思います。ブランド名を背負って商いをするような規模の企業でも、Makuakeを使って「改良前の試作品です」と堂々と表明して商品を見せられる。今までになかった「発売前フェーズ」の実験、あるいは従来型テストマーケティングから一歩進んだ「先行テスト発売」という仮スタート地点が設けられるようになりました。

応援購入の度合いや、寄せられた応援コメントを受け、消費者の実際の反応を見たうえで、量産するのか、さらに改良するのか、あるいはお蔵入りするのかを検討できるようになりました。そして、この環境を活かしたものづくりを行うのであれば、最も適する方法は「スモール・スタート」ではないかと考えるのです。

「ボツ企画」だったキングジムの「カクミル」

それを示すのにぴったりの事例がMakuakeにあります。

株式会社キングジムは「ファイル」と「電子文具」を核とした、文具・事務用品のメーカーです。「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」をビジョンに掲げ、文房具の領域に留まらない積極的な商品開発にチャレンジしてきました。

キングジムは、Makuakeでも4回のプロジェクトを実施していますが、いずれも目標金額を上回っており、4回目には応援購入総額6000万円超を達成しています。

2回目のプロジェクトである、“気づかせメモ”の「カクミル」は卓上電子メモパッドです。メモや付箋に「あとでやること」「覚えておきたいこと」を書き留めていたのに、書きっぱなしで忘れてしまった経験はないでしょうか。「カクミル」は電子ペーパーを採用したデジタルメモパッドで、書いた内容にアラームを設定したり、ToDoリストとして使えたり、スケジュールも書き込めたりと、使う人の予定を確実にフォローしてくれる機能を持っています。付箋で予定やタスクを管理している人にはお勧めです。

実は、「カクミル」は社内での企画会議に通らず、「ボツ」を食らったアイデアでした。

キングジムは社長も含めて商品開発を活発に行う社風があるそうなのですが、社長をはじめとする取締役全員が揃う新製品の企画会議段階で「これは売れない」と落とされてしまいました。

ところが、開発者の方はどうしても諦めきれずに説得を続け、「売れるか売れないか市場に聞いてみよう」と、需要調査としてMakuakeを活用したといいます。「応援購入総額1000万円を達成したら商品化してもよい」という目標に対し、大ヒット。結果的に1300万円を超え、無事商品化に至りました。

キングジムの「カクミル」 『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)より