羽根帽子姿の山岳部隊OBが笑顔で案内

シンティッレ内部はすべてパーテションで区切られていて、とても導線のしっかりした構造になっている。入り口から中まで案内してくれたのは、特徴的な羽根帽子をかぶったアルピーニ(山岳部隊)OBのおじいさんたちだ。「自分たちが社会に役立てるときが来た」とばかりに、なにを聞いてもはきはきと笑顔で対応してくれる。この「作戦」には、ロンバルディア州だけで約3000人のアルピーニがボランティアとして参加しているという。

入場からワクチン接種までは、ものの20分ほどだった。まずは書類のチェック。待ち時間は10分ほどで、かつ十分な数の椅子が用意されていた。小さな机にプラスチックのパーティションを付けただけのブースにパソコンが置かれ、予約の確認書と保険証をチェック。ブースの上には液晶画面に受付番号が表示されていて、空港の発着案内のようにパタパタと数字がめくられる音がする。本来、デジタルなのだから音はしないと思うのだけど、自分の順番が来たことを知らせるために、待機している人の注意を引く効果はありそうだ。ちょっとしたことだが、ピンポン音よりは気持ちが和む。

問診を受けて接種ブースへ

予約のチェックをしたら医師の問診へ。次の誘導を待っているのは2人だけ。すぐに呼ばれて指示された番号のブースへと進む。事前に記入した問診票に従って体調や持病のあるなしを確認する。筆者の場合は気管支拡張症があるので、その症状(今、せきがあるかどうかなど)を問われた。

写真=新津隆夫
シンティッレのワクチンセンターの問診ブース。通路の奥の突き当りを右にいくと接種ブースがある。

筆者の問診をしてくれた医師は見るからに定年後の紳士だったが、妻と娘はインターンが終わったばかりとおぼしき若い女医だった。おばあちゃん先生もいるし、若い男性もいる。州の公報によると地域社会医療機構(公立病院の組織)に所属する医師たちだ。

問診のあとはワクチン接種のブースに進む。ブースには医療用の棚と、小さな革張りの一人がけソファ。この場に何時間も滞在するわけでもないから、機能性を考えれば折りたたみ椅子でもいいはずだが、こういう小道具に手を抜かないのはイタリアらしい。

目の前の棚にはあらかじめシリンダにワクチンの溶剤を注入された3本の注射器が並んでいた。バイアルは見られなかったが、問診の医師の説明によると、その日センターにあったのはファイザー社製のワクチンだけ。そうでない場合は接種者の年齢(例えばモデルナは18歳以上、ファイザーは16歳以上)によって使い分けているという。数日後、友人が同じ場所で接種した時にはアストラゼネカ製だけだったとのこと。