大切なのは「サッカーを両手で扱うこと」「病院愛」

【原田】個とグループという観点に立つと、サッカーは不思議なスポーツです。ブラジル代表など各国の代表選手は日頃、違うクラブで練習をしている。ところが数日、ときに数時間の練習で一つのチームになり、ワールドカップなどで驚くような連動性を見せることがありますよね。

【李】1+1を共有できる選手同士を集めれば、簡単な決まり事だけ確認するだけでいいんです。あとはメンタルとフィジカルのコンディションだけ整えればいい。

【原田】李さんの話を聞いていると、サッカー、そしてスポーツを非常に大切にしていることが伝わってきます。

【李】(指で弾く仕草をして)サッカーを指で扱う人、片手で扱う人、両手で扱う人がいます。ぼくは両手で扱う人でないと付き合いたくない。

【原田】サッカーを大事にするということですね。ぼくも似ているかもしれません。病院長として何を重視するかというと、病院愛を持っているかどうか。病院愛っていうと少々大仰に聞こえるかもしれませんが、自分が働いている病院が好きで、少しでも良くしたいと思っているかどうか。それをみんなに求めたい。

【李】とりだい病院、さらに言えば医療を両手で扱うべきということですね。ぼくはこれまで日本全国に行ったことがあったのですが、山陰の二県、鳥取と島根だけは訪れたことがなかった。とりだい病院に来て、想像以上に設備が整っていて、みなさんが生き生きと前向きに働いていることに驚きました。

【原田】(笑顔で)ありがとうございます。

おしゃれをしないと人間はダメになる

【李】ぼくなりにとりだい病院をもっと良くするにはどうすればいいのかとも考えました。病院の方々の話を聞き、半日ほど米子の街を歩いてみました。そこで思ったのは、タキシードやドレスを着て出かける場所がないんじゃないかと。

【原田】(首を傾げながら)タキシードとドレス?

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 7杯目』

【李】社会性にも繋がるんですが、人間というのは、おしゃれをして出かける場所がないと、どんどん楽な方向に流れていってしまう。普段はカジュアルな場所でTシャツで食事していいんです。

でも時には日常から切り替えて、正装して出かけるべき。そうすれば間違いなく、生活が豊かになる。なにより子どもの大人に対する見方も変わるはずです。そうした場所に出入りできる、おしゃれ、モラル、TPOをわきまえた大人になりたいと考えるようになる。

【原田】横浜中心部で育った、おしゃれな李さんらしい発想です。

【李】(微笑みながら)それはともかく、もう一つは、折角、韓国や中国に近いのだから東アジア全体を視野に入れるべき。その意味でここに高気圧酸素治療室のような医療機器があることは大きい。米子には皆生温泉もある。韓国のサッカー選手たちにとっても魅力的な場所なはずです。

【原田】なるほど、今後のキーワードは社会性と汎アジアかもしれません。今後もとりだい病院へ色々と意見をお願いします。

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