腸の不調は病気の引き金になる。国民病ともいえる便秘もその1つだ。鳥取大学医学部附属病院消化器内科の菓(くるみ)裕貴助教は「便秘を解消するために安易に下剤を使ってはいけない。まずは腸内環境の乱れを疑うべきだ」という——。
※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 7杯目』の一部を再編集したものです。
なぜ、小腸ではなく大腸が注目されるのか
近年、「大腸」の周辺が騒がしい――。
肥満の人間と痩身の人間とでは腸内細菌が違う、あるいは、活発なネズミと臆病なネズミの腸内細菌を取り替えると性格が変わってしまった、といった突拍子もない話が実際に報告されている。
長らく、大腸の機能は水分吸収のみ、とされていた。ところが、大腸は体質、性格にまで影響を及ぼすという研究結果が出てきたのだ。「腸活」という言葉を耳にすることも多い。大腸は現在、最も注目されている内臓であるのだ。
そもそも大腸とは何か――。
我々が口に入れた食べ物は咀嚼されて、食道を通ってまず胃へ、その後、十二指腸、小腸、そして大腸に到達する。大腸の長さは1.5メートルから2メートル。右下腹部から右上腹部、そして左上腹部から左下腹部に位置し、肛門につながっている。
「基本的に栄養の吸収は、小腸の役割なんですよ。そのため小腸は、沢山の機能がある。一方、大腸の機能ではっきりと分かっているのは水分を吸収することだけ。ただ、腸内細菌という観点で言うと、その数は小腸とは比較にならない。この腸内細菌が色んなことに関係することが分かってきたんです」(鳥取大学医学部附属病院の河口剛一郎消化器科講師)