未接種でも「区別しない」と言っていたのに…

そもそも、ワクチン接種については、知らないうちに政府の言っていることが少しずつ変わっていく。

昨年、まだワクチン接種が始まっていなかった頃は、「ワクチンの接種は義務にはしない」ということがやたらと強調されており、かえって奇妙だった。さらに、「ワクチンを接種した人が絶対に他人に感染させないと証明されたわけではないので、接種者と未接種者との区別はつけない」と言っていた。

それがいつの間にか、「ワクチン不足が解消されて接種の機会が全国民に均等に与えられるまでは、区別はつけない」となり、最近になって案の定、「民間組織(例えば航空会社、レストラン、美容院、映画館など)が、ワクチン接種者、コロナ快癒者だけを受け入れると決めた場合、それは合法である」に変わってしまった。

つまり、それ以外の人は、いちいちコロナテストを受けて、陰性証明を提出する必要がある。とはいえ、レストランやジムに行くのに、毎回、コロナテストを受けるのはかなり面倒なので、これでは実質的に、普通の生活を送りたければワクチン接種が義務だと言われているようなものだ。政府は、自分たちは「区別をつけない」と言いながら、それを民間にやらせているようにも見える。

筆者撮影
今のドイツで明るい表情の人がいるのは緑の中だけだ(4月、ライプツィヒ市内)

「ワクチンパス」発行に異議も

それどころか、EUは大急ぎで、共通のワクチンパスの発行を目指しているという。

ワクチンパスには、ワクチン接種の有無、コロナ罹患と快癒、24時間以内のテスト結果などの最新情報が入り、そのパスをスマホで提示すれば、EU内を制限なしで動けるようになるという。

つまり、ワクチン未接種の場合、毎日、コロナのテストをしなければ、お隣のフランスにも行けない。それどころか、国内のホテルでも泊めてくれなくなる可能性は高い。

ただ、最初からこの動きに異議を唱えている法律家や医師、政治家も多い。

彼らの主張では、基本的人権というのは、生まれながらにして全ての人間に備わっており、当局が奪ったり、あるいは与えたりできるものではない。基本的人権は「特権」ではなく、従って買うこともできなければ、努力したり、うまく立ち回ったりして手に入れるものでもない。だから、それを手にするために何の条件もつけてはならないということになる。

例外的な制限はある。例えば、享受する者がそれを保証している国家の国民であること、また、選挙権は成人でなければ与えられないなどだ。しかし、それ以外に多くの制限はかけられていないし、かけられるべきでもない。もちろん、健康であっても、病気であっても、基本的人権が制限されることはない。