幹部や議員への説明は対面、大量の資料も

省庁別の比較では、『対面での大臣レクを要求された』という回答者の割合が多かったのは上から外務省、内閣官房、内閣府だった。

「議員さんや官僚の幹部を見ると、『部下のテレワークは許すが、幹部は出社しないといけない』という形になっている。『幹部にレクをする立場の人は来て当たり前』という認識から抜けられていない」と小室さんは言う。

環境省は『対面レクの要求なし』との回答だった。小泉進次郎大臣が2020年1月に育児休業をとり、大臣自らがテレワークをするようになった影響があるようだ。

また、テレワークだけでなく、ペーパーレス化も進んでいない現状が、アンケート回答からも読み取れる。

「審議会を開催する度に、毎回複数の議員事務所に審議会資料を紙媒体で届けることが慣例化しています。審議会の資料は役所のホームページに公開されているので、紙媒体で確認したい場合は各議員事務所で印刷するようにしていただきたいです。膨大な量の資料を印刷し、資料を順番通りに組んで封筒に入れ、霞が関から永田町の議員会館まで電車と徒歩で運ぶ作業をしています。見えないところで相当の時間とマンパワーがさかれており、このような作業は全て若手職員がやっています。(厚生労働省職員)」

国会開会時の残業代、約102億円

しかし、最も深刻なのは、国会開会中の官僚の残業だ。ワーク・ライフバランス社は、経済産業省、内閣府を含む6つの省庁で働き方改革のコンサルティングを請け負い、残業をかなり減らすことができたが、国会開会時期の残業を抑えることはできなかったという。

慶応義塾大学の岩本隆特任教授の2018年度の試算によると、国会開会中に発生する国家公務員の残業代は約102億円、深夜帰宅などに使うタクシー代は約22億円とされる。もちろん、これらの財源は国民の税金だ。

アンケートでは、残業の主な要因として「国会議員の事前の質問通告が遅いために、官僚が長時間待機を強いられている」ことが挙げられている。質問通告というのは、国会の審議などで質問する議員が、質問内容を事前に政府に通告し、準備をさせるためのものだ。官僚は通告内容に応じて大臣らの答弁を準備する。

「質問通告は2日前までに行う」という与野党合意があるものの、それが徹底されておらず、実際は通告が前日になることも多い。すると、それまで官僚は待機し、直前に出た場合はそこから夜通しで対応を強いられることになる。

「2日前ルールが守られていると感じるか」との質問には、85%がそう思わないと回答している。