こうなったら、酒を求めて三千里、敵は幾万ありとてもである。高田馬場駅から山手線に飛び乗り、「昼のみの聖地」御徒町で下車。ここからアメ横までの線路下に昼からやっている居酒屋が多くある。

だが、開いている店は多くない。最初の店で、客引きをやっているあんちゃんに、「酒は飲めるかい」と聞く、手を顔の前で振り「酒は出さない」と情けなさそうにいう。次の店には「アルコールは出せませんが、うまいノンアルコールがあります!」と大書している。「ふざけるな」といいながら、あっという間にアメ横まで来てしまった。

写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです

不思議な白昼夢まで見てしまう始末

アメ横の人通りは多い。行列しているのはたこ焼き屋。少し先を右に曲がると居酒屋のメッカだが、「もつ焼大統領」が閉まってる! 開いている居酒屋も、「テイクアウトできます」と弁当屋に成り下がっている。

路頭に迷うというのはこのことだ。ボー然と歩いていると、狭い横町から若い男が出てきて、「オジサン、酒あるよ」と声をかけてくるではないか。

男が連れて行ったのは路地の奥にある古い居酒屋のようだが、看板もなければ明かりもついていない。ぼったくりかな? いささか心配にはなったが、好奇心だけで生きてきた人間だから、入り口を開けて中に入る。薄暗くて様子が分からなかったが、目が慣れてくると、小さなテーブルに一人ずつ座って何か飲んでいる。

「オジサン、何にする? ビール、焼酎、日本酒、ウイスキーもあるよ」

ビールをくれというと、「1本2000円、現金払いね」。カネを握らすと中瓶とグラスを持ってきた。全員「黙飲み」。飲みながら、「これって、アメリカの禁酒法時代のようだな」とひとりごちた。

歩きながら、あまりの酒欲しさに白昼夢を見ていたようだ。

一人客や寄席すら禁止する愚策

家飲みができるからいいではないかという声が聞こえてきそうだが、そうではない。家でカミさんと角突き合わせて飲む酒と、居酒屋で飲む酒は違う飲み物なのである。パンケーキが好物の菅義偉首相には理解できないだろうな。

私だってコロナに感染するのは怖い。だが、身体の健康が大切なように、心の健康維持も大切である。飲食店でのクラスターが多いからといって、酒に罪があるわけではない。安酒をくらって酔っ払い、大声を出し、周囲を辟易とさせるやからのほうに罪がある。罪を憎んで酒を憎まず。

宗教改革で有名なマルチン・ルターもこういっている。

「酒と女と唄を愛さぬ奴は生涯バカで終わる」

東京都の小池百合子知事は、「コンビニで酒を売らないようにできないか」とまでいい出した。私には狂気の沙汰としか思えない。