「訴訟費用を日本から徴収してはならない」という歩み寄り

もちろんこれですべての法的問題点が解決されたというにはほど遠い。

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①第一次訴訟について「訴訟費用を日本から徴収してはならない」という歩み寄りが始まったとはいえ、両訴訟を今後どう融合していくのか。

②第二次訴訟においても、慰安婦制度そのものは、国際人権法などに違反する行為としてこの事件被害者に対する深刻な人権被害であると定義している。

③地裁レベルでの判断が仮に融和されたとしても、両訴訟の原告元慰安婦は、高裁―最高裁と上訴する権利があり、報道ではそのような動きに出るとされ、その結果がどのようになるかは不明である。

④さらに、ICJへの提訴について、第二次訴訟原告の李容洙氏は2月16日大統領府にICJ提訴を訴願。日本側でも1月8日判決直後に政府筋がICJ提訴を検討し始めたという報道が現れた。ICJへの提訴は国によってのみなされるので、4月21日判決後は、この問題は当面韓国政府の判断待ちになると思うが、この新しい法的な手段が今後の日韓歴史問題にどのような影響を与えるかは、現時点では予測できないものがある。

今回の判決は、日本政府の立場を明確にバックアップしている

さてわが日本政府は、この判決に対してどのように動いたらよいのか。

4月21日、茂木敏充外相は衆議院外務委員会で「判決が主権免除についての日本政府の立場を踏まえたものであれば、適切なものと考える」と条件付きながら評価したが、その後大きな動きはみられない。

上述のように、たくさんの不透明性があっても、私はいま、日本政府は重大な分岐点に差し掛かったと思う。

茂木大臣が述べられたように、今回の判決は、主権免除に関する日本政府の立場を明確にバックアップするところがある。その背景に、いかなる動機と目的と手段があるかを私は明確化できないが、背後に文在寅大統領がいると考えるのが自然と思う。

そうであるとすれば、日本政府として、このような動きを歓迎し、日本としてできることはやりましょうという動きに出ることが最善だと思う。

これこそ外交の出番だと思う。