保護猫カフェの代表が、里親の家を直接訪ねる理由

横浜にある譲渡型猫カフェ「ケット・シー」では、奄美大島のノネコを中心にしつつも、15のケージに余裕があれば、全国各地の殺処分されそうな猫を受け入れている。

カフェは、開放的でおしゃれな雰囲気だ。明るい色の木の床がとてもきれいで、動物臭もほぼしない。猫が糞をすればその都度拭き取り、頻繁に掃除をしているという。壁には防臭効果のある漆喰を使い、床暖房を入れている。換気にも気を配ることで、猫と人間がどちらも快適な空間をつくっている。

いま「ケット・シー」にいる猫たちの写真(撮影=笹井恵里子)

ここから譲渡されていく猫たちには幸せになってほしい、とスタッフ誰もが願う。

だから正式に猫を譲渡する際には、代表の服部由佳さん自らが里親さんの家を訪ねる。それに付き添ったボランティアの岩﨑日登美さんは「届けに行くことはすごく大事」という。

「まず、申請された住所が、本当にその方の家かわからないでしょう。次に、収入や家の広さなど“猫を飼う条件”がよくても、室内が不衛生など、飼育に適した環境でないこともあります。最近は譲渡前のやりとりをSNSで行うことが多いので、行ってみて猫が安全に幸せに暮らせる環境かどうか、目で確かめることが大切です」

今のところ「もう飼えません」と音をあげた人はゼロ

大抵のペットショップでは売ったら終わりだが、「ケット・シー」では譲渡後のフォローもする。譲渡1カ月から6カ月までは月1回写真を提出して報告してもらう。その後は1年ごとに報告してもらうことになっている。

「まだケットシーができて1年なので、譲渡から1年以上経った猫はごくわずかですが、これからどんどん増えていきます。どう管理していくか、頭を悩ませています。ここで譲渡する際は『終生飼育する』ことが条件で、第三者への譲渡は禁じています。今のところ『もう飼えません』と音をあげた人はいませんが、病気など何か思わぬトラブルがあって、『飼えなくなった』と言われたらどうしようと今は案じています」(服部さん)

「ケットシー」では月10頭を譲渡していて、オープンから1年経過した今、譲渡数は120頭を超えた。そのうち42頭は奄美大島からきたノネコだ。

撮影=笹井恵里子
この1年間に「ケット・シー」を通じて譲渡された猫120匹の写真。このうち42匹は奄美大島のノネコである。

奄美大島のノネコはどんな性格なのか。