全国で毎日約90頭が自治体に殺されている
(第2回から続く)
あなたは犬や猫が殺処分される様子を見たことがあるだろうか。
私は犬も猫も飼ったことがない。だから以前は「1年間に数万頭が殺処分される」と聞いても、正直ピンとこなかった。それが奄美大島の「ノネコの殺処分計画」を知り、殺処分を何とか阻止しようと活動する人たちを見て、また取材の合間に犬や猫と触れ合ううちに、その気持ちが少しずつ変わっていった。
「飼えなくなったから」と捨てられた犬や猫は、そこで繁殖し、最後は自治体に保護されることになる。そして引き取り手のいない犬猫は殺処分されてしまう。
昭和50年前後は年間100万頭もの犬や猫が処分されていた。年々減少しているが、いまだに猫が約2万7000頭、犬が約5600頭、計約3万2700頭も殺処分されている(2019年度)。全国で毎日約90頭が殺されていることになる。
糞尿にまみれ、ゴミのように積み上げられる
東京都千代田区では、全国に先駆けて2011年に猫の殺処分ゼロを実現し、現在も継続している。自治体と協働して「飼い主のいない猫」問題に取り組む「ちよだニャンとなる会」代表の香取章子さんは、こう訴える。
「殺処分は必要悪、ゼロにこだわるのはおかしいという人が今もいますが、そういう発言をする人は殺処分の現場に行って見てきてほしい。知らない動物と一緒にガス室に入れられ、これから殺されるんだと察知している彼らの絶望的な目を見たら、殺処分ゼロがどんなに素晴らしいことか、わかります」
だから私も、ある自治体が犬や猫を殺処分するまでの様子を収めたビデオを見た。狭い殺処分室に何匹も押し込められ、たくさんの犬や猫たちが怯え、鳴いている。そして自治体の職員が、「ガス注入」のボタンを押す。すると動物たちは足をばたつかせ、もがき苦しみながら次々にひっくり返っていく。
なんて残酷な光景なのかと涙が止まらなかった。死んだ犬や猫は糞尿にまみれ、ベルトコンベヤーで運ばれ、ゴミのように積み上げられる。それから焼却され、骨になる。