「1匹あたり150万円」の難病を2匹が発症
(第1回から続く)
環境省の計画によって、奄美大島ではノネコの捕獲がつづいている。捕獲から1週間がたち、引き取り手がいないノネコは「殺処分」されてしまう。
そんなノネコを救うため、美容師の服部由佳さんは1年前、銀行から500万円を借りて、横浜に譲渡型猫カフェ「ケット・シー」を開いた。この1年で42匹のノネコが新しい家族(里親)をみつけ、殺処分を免れている。
しかし運営は大変だ。服部さんは「これほど医療費がかかるとは思いませんでした」と打ち明ける。
「下痢など調子が悪くなって病院に行くたびに数千円。治療に一週間かかることもざらにあります。歯周病などになって歯を抜くとなると、手術で数万から数十万円かかります。幸い親しくしている獣医師の先生のご厚意で、少し安くしていただいたりもしますが、それでも昨年10月にFIP(猫伝染性腹膜炎)という病気を猫が発症した時には焦りました。3カ月間の治療が必要で、1匹あたり150万円かかるのです」
「お金はあとからでも何とかなる」
獣医師の齊藤朋子さんによると、FIPは「もともと猫の半数以上がもつウイルスが変異し、病気を発症する“不治の病”」であったという。猫同士の感染は低いといわれるものの、発症すれば1~2週間で命を落とす。それがおよそ1年前に新薬が登場。これを84日間投薬すれば、治癒が見込めることになったのだ。
「もちろん(お金を)出しました」と、服部さん。
「治せるとなると、それをするか、しないかの二択。私はやってあげたいと思いました。FIPを発症した2匹を私とボランティアさんの自宅で預かり、獣医師の先生の指示通りに毎晩同じ時間に投薬しました。昨年10月から今年の2月くらいまでですね。投薬時間がずれないように気をつけて、クリスマスもお正月もずっと家にいましたよ(笑)」
こういう時、服部さんは「お金はあとからでも何とかなる」と繰り返す。開業費として500万円の借金をする時だってそう言っていたのだ。「お金は人が働けばどうにかなる。けれども、命は、取り返しがつかない」と。それにしても、高額だ。